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増加する非結核抗酸菌(NTM)症の疫学的現状とその背景について

No.4961 (2019年05月25日発行) P.54

工藤翔二 (結核予防会理事長)

森本耕三 (結核予防会複十字病院呼吸器センター(呼吸器内科)医長)

登録日: 2019-05-22

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  • 近年増加する,非結核抗酸菌(nontuberculous mycobacteria:NTM)症の疫学的現状とその背景について,ご教示下さい。結核予防会複十字病院・森本耕三先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    工藤翔二 結核予防会理事長


    【回答】

    【わが国は肺NTM症の高蔓延状態にあることが明らかとなった】

    NTMとは結核以外の培養可能な抗酸菌であり,自然環境のみならず水道,風呂場などの家庭環境にも広く分布しています。長い間NTMは環境雑菌(弱毒菌)として捉えられていましたが,1980年代頃より呼吸器臨床医は,NTMによる肺感染症(肺NTM症)の増加を実感していました。しかし,その臨床的負担の増加にもかかわらず,結核と異なり基本となる疫学情報を欠いていたために,その重要性を示すことができませんでした。また,2000年以降,既に専門病院以外でも患者数が増加し,その対策が求められるようになりましたが,一般的認知度も低く,その状況は変わることはありませんでした。

    近年,この状況が変わり,肺NTM症対策の機運が高まった大きな要因は,日本医療研究開発機構(Japan Agency for Medical Research and Development:AMED)支援による研究班(阿戸班)が多角的疫学調査を行い,その実態を示したことによります。2014年に行われた全国アンケート調査では,罹患率(同年の新規症例数/10万人)が14.7/10万人と,菌陽性結核のそれを初めて超えたことを示しました。この結果はEmerging Infectious Disease1)へ報告され,メディアでも広く取り上げられることとなりました。

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