日本の救急医療は30年で変わりました。学会認定の救急専門医が出現し、救急科の標榜が認められ、いわゆる救急科医が出現したのも今世紀の出来事です。救急医療の常識が広がりつつあり、救急医も少しずつ増えています。そんな昨今、救急医の役割も変わってきました。重症外傷を中心とした医療から、家族構造や社会構造の変化により、さらに幅広く急性期の疾病や傷害に対応する必要がでてきています。どんどん増えるニーズと徐々にしか増えない救急医、切迫する医療費─。そこで、今後必然的に効率化がキーポイントとなります。
今後の30年で何が起こるかということは想像が難しいですが、しばらくは救急医数の増加と、それに伴う標準化が着々と行われつつ、同時に医療機関の集約化により、施設ごとの医療レベルの向上と増え続ける医療ニーズに効率よく応えることを目標としていくのだろうと思います。そんな中で救急医に求められることを考えてみたいと思います。
30年間でカルテは電子化され、医療における情報収集や発信も紙から電子媒体へと変化しました。知りたい情報がすぐに得られるようになる一方、情報の取捨選択が迫られるようになりました。次の過程は、この取捨選択の領域をコンピューター、とりわけAI(人工知能)がサポートしていくことになるであろうことが想像されます。病歴や身体所見、正常と異なる臨床検査所見や画像所見を統合し、情報の整合性を判断して最も可能性の高い疾患を提案するところまでは、あっけないほど簡単に到達するだろうと個人的に見込んでおります。治療適応についても、種々のデータを基にきわめて合理的に提示されるはずです。
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