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少子高齢化と新しい「家族」像[特集:医療の近未来予想図]

No.4958 (2019年05月04日発行) P.59

森 臨太郎 ( 国連人口基金・アジア太平洋地域事務所/地域アドバイザー (少子高齢化・持続可能な開発担当))

登録日: 2019-05-05

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  • ※本稿は著者個人の考え方を示すものであって必ずしも国連など所属組織の公的な見解を示すものではない。

    世界が大きな変動期を迎えている。その一つの要素が全世界で急速に進む人口(少子)高齢化である。これは、妊娠・出産が女性や家族自身で決められるようになり、より子育てに投資できる環境が促進し、医療の進歩により死亡率が下がった結果でもある。大変喜ばしいことである。

    高齢化は、後半の人生の延長ではなく、子ども期間の延伸も意味する。子どもの成長発達に投資することで経済的な自立が遅れ、定年制度が保持されたままであると、その投資によって生産性の効率が上がっても、人口高齢化とともに消費が生産を上回る期間が延びるため、社会としての経済基盤に不安が生じる。高齢者は女性の割合が圧倒的に高く、女性の社会進出が遅れるとその傾向はより顕著となる。

    日本の高齢者の労働意欲は諸外国に比べても高い。定年や常勤制度など終身雇用を基本とする社会システムが、現代の市民の生き方に沿うような修正がなされることを前提にすると、医療界が目指すべきは、平均寿命というより健康寿命を延伸し、積極的な社会参加を可能にすることである。

    健康寿命の決定要因に関する包括的な系統的レビューが示すのは、その要因の多くが、生活習慣関連であった。生活習慣を修正する試みは多く研究されているが、最も効果的な修正時期は、新しい家族ができる時である。新しくパートナーとの関係ができる時や、妊娠・出産といった機会である。少子化対策も、家族のあり方や男女の格差がカギである。

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