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日本の創薬業界とアカデミアに未来はあるか?[特集:医療の近未来予想図]

No.4958 (2019年05月04日発行) P.54

萩原正敏 (京都大学医学研究科 形態形成機構学教授)

登録日: 2019-05-04

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  • わが国のライフサイエンス系の学会などで、大学や公的研究機関に籍を置く研究者が会うと、予算が足りないとか、定員削減でやっていけないとか、暗い話題が多い。また、本邦の製薬企業の方と共同研究の話をしても、明るい未来を語る方にお会いすることは少なく、悲観的な見通しを聞くことが多い。ライフサイエンスは21世紀の成長分野であり、日本はノーベル賞受賞者の数でも、米国に次ぐ位置につけているにも関わらず、こうした悲観的な見通しが語られるのはなぜであろうか?

    近年、米国では、創薬シーズ発掘などの探索段階において、アカデミアが主導的役割を果たす創薬スタイルが主流となっている。これに対し、わが国では依然として大手製薬企業が創薬の主たる担い手であり、アカデミアの優れたセレンディピティーを十分に活用してこなかった。例えば、がん治療法の概念を変えたPD-1/PD-L1抗体による免疫チェックポイント療法は、本医学研究科の本庶佑博士らが1992年にT細胞の細胞死誘導時に発現が増強される遺伝子としてPD-1を単離・同定し、2005年に湊長博博士らが作製したPD-1抗体が悪性黒色腫に対し優れた治療効果を有することを見出したことに端を発している。しかしながら、完全ヒト型抗PD-1抗体薬ニボルマブの開発などは米国のメダレックス社が主導し、同社を買収したブリストル・マイヤースクイーブ社が、日本、韓国、台湾以外のニボルマブの製造・販売権を有する。

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