【質問者】
末廣栄一 山口大学医学部附属病院先進救急医療センター/脳神経外科診療准教授
【ABCDを安定化させてから熱創傷を処置。トリアージはSTARTによると過小評価となることがあり注意】
熱傷を負った人,特に重症熱傷では熱傷創が目立ちますし,Ⅱ度熱傷では受傷部位の疼痛の訴えが強く,「受傷部位」の診療にばかり目が行きがちです。逆に火災現場・事故現場から逃げてきた人では,煤だらけのわりに大した熱傷創の程度でなければ軽症と判断しがちです。このどこが危ないのかというと,まずは見た目のため,つまり熱傷創のために診断・治療の優先順位を間違ってしまうことです。
たとえば調理中に衣服に着火して上半身の熱傷を受傷した場合に,熱傷創の処置に気を取られていると,①気道熱傷による喉頭蓋~声門の腫脹が進行して窒息をきたす〔気道(airway)の問題〕,②体幹全周にⅢ度熱傷を受傷した場合には胸郭が拡張できなくなり換気障害をきたす〔呼吸(breathing)の問題〕,③火が付いたまま転げ回って逃げた際に腹腔内実質臓器損傷から腹腔内出血をきたしショック状態となる〔循環(circulation)の問題〕,④不穏が強いのは熱傷を受傷してパニックになっているためと考えていたら一酸化炭素(CO)中毒をきたしていた〔中枢神経の問題(dysfunction of CNS)〕,ということが起こりえます。したがって,ある程度以上の熱傷を受傷した可能性のある人を診療する場合には,熱傷創から診療に入るのではなく,気道,呼吸,循環,中枢神経所見から評価して,異常があれば安定化処置を講じる必要があります。
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