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低栄養の15歳未満の女子アスリートへの指導法【体重増加という説明はせず,利用可能エネルギーを上昇させるよう指導するとよい】

No.4911 (2018年06月09日発行) P.58

鈴木眞理 (政策研究大学院大学保健管理センター教授)

能瀬さやか (東京大学医学部附属病院女性診療科・産科)

平池 修 (東京大学医学部附属病院女性診療科・産科准教授)

登録日: 2018-06-06

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  • 低栄養による身長の伸びの低下や初潮の遅れを認める15歳未満の女子アスリートに利用可能エネルギーの増加を指導する際,競技の記録を重視してご家族にも受け入れてもらえない場合があります。女性アスリート外来での診療と国立スポーツ科学センターなどからの勧告について,東京大学医学部附属病院・平池 修先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    鈴木眞理 政策研究大学院大学保健管理センター教授


    【回答】

    専門的競技開始年齢の低年齢化により,ジュニア期から減量や低体重を求める指導が行われているケースはめずらしくありません。特にジュニア期のアスリートにとって指導者は絶対的な存在であることから,アスリートだけでなく保護者も,減量により健康を害していることに気づかず,目先の競技記録向上を求めてしまう傾向があります。ジュニア期の体重制限は初経発来の遅延や発育・成長の制限にもつながり,生涯にわたり健康を害する可能性があります。

    近年,国際オリンピック委員会では,relative energy deficiency in sport(RED-S)の概念を提唱し,スポーツにおける相対的なエネルギー不足は,発育や発達,骨格筋,免疫,代謝,精神等へ悪影響を与え,パフォーマンスの低下をもたらすとし,運動量に見合った食事からのエネルギー摂取量の重要性について警鐘を鳴らしています。また,米国スポーツ医学会でも,女性アスリートに多い健康問題としてlow energy availability(利用可能エネルギー不足),無月経,骨粗鬆症を挙げ,これらを「女性アスリートの三主徴」と定義しており,三主徴を認めるアスリートでは疲労骨折のリスクが高まることも明らかになっています。

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