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大村益次郎(12)[連載小説「群星光芒」281]

No.4870 (2017年08月26日発行) P.66

篠田達明

登録日: 2017-08-27

最終更新日: 2017-08-22

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  • 刺客に右膝を斬られた大村益次郎は押入れの襖に突き当たり、襖もろともあおむけに倒れた。

    湯豆腐鍋がひっくり返り、行燈の灯が消えて四畳半の室内は真っ暗になった。そこへもう1人の刺客が突入してきた。

    安達幸之助はとっさに、
    「拙者は大村だ、貴様らは何者だ」

    と叫んで2階の窓から外に飛びおりた。刀を手に取るひまはなかった。

    だが、外には6人の仲間が待ち構えていた。2人の刺客も安達のあとを追って2階から地面に飛び降りると、
    「大村が逃げるぞ」

    と仲間に声をかけた。

    8人の刺客はだれも益次郎の顔を知らず、大村と名乗った安達をなますのように滅多斬りにした。

    静間彦太郎も安達につづいて2階から地面に飛びおりたが、たちまち刺客の刃の嵐に血祭にされた。

    凶徒らは、「仕留めた!」 「仕留めたァ」と興奮して叫びながらその場を走り去った。

    益次郎は額や右手右膝に深手を負いながらも、手ぬぐいで右の太ももを緊縛して膝の出血を防ぎ、暗闇を這って階下の風呂場まで逃れた。

    湯を張った風呂桶の栓をぬき、蓋をかぶせて額からの出血を布切れでおさえつつ、息をこらして救助をまった。

    兵部省の吉富音之助は1階の居間で仮眠していたが、異様な物音に跳ね起きた。

    太刀をつかみ、兵部大輔の部屋へ駆けつけると、灯りが消えてだれもいない。

    2階の窓が開いていて、外でだれかが「仕留めたァ」と興奮して叫びながら走り去る気配がした。

    残り1,515文字あります

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