日本学術会議の臨床医学委員会脳とこころ分科会(山脇成人委員長)が7月28日、精神・神経疾患の治療法を開発するための産学官連携システム「PPPs」構築の必要性を提言した。
提言では、健康・生活被害指標(障害調整生存年数)(用語解説)の評価によると、2020年にはがんや循環器疾患を上回り、うつ病が第2位、認知症が第3位に位置付けられると指摘。社会保障費の増加や生産労働人口減少などによる社会経済的損失は甚大で、「国家基盤に関わる深刻な課題」である一方、病態解明が不十分で客観的診断法がないことなどを理由に、巨大製薬企業が向精神薬開発から撤退を表明している現状に危機感を示した。
その上で、企業単独では解決困難な共通課題として、①イメージングバイオマーカーの開発、②治験・臨床研究の症例データベース化、③Brain Machine Interface(BMI)、④精神疾患の層別化技術開発、⑤神経疾患の治療法開発のための基盤構築、⑥疾患横断的ゲノム創薬イニシアチブ―を列挙。企業間の競争前連携フェーズとして産学官が連携して治療法を開発するPublic Private Partnerships(PPPs)システムの構築を提言した。
PPPsは、民間事業者の資金やノウハウも活用して官民で社会資本を整備し、公共サービスの充実を進める産学官連携体制の1つ。これにより、競争フェーズの資金が有効活用され、効率的・効果的な治療法開発につながるとしている。提言では、アカデミアと企業どちらもが活用できるPPPsの実現のためには、公的資金だけでなく企業の参加や経済的支援を含めた体制の構築を求めている。