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「地域力強化検討会中間とりまとめ」をどう読むか?─「新福祉ビジョン」との異同を中心に [深層を読む・真相を解く(60)]

No.4841 (2017年02月04日発行) P.20

二木 立 (日本福祉大学学長)

登録日: 2017-02-03

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  • 厚生労働省は、昨年12月26日、地域における住民主体の課題解決力強化・相談支援体制の在り方に関する検討会(略称「地域力強化検討会」。座長:原田正樹日本福祉大学教授」)の「中間とりまとめ─従来の福祉の地平を超えた、次のステージへ」(以下、「中間とりまとめ」)を発表しました。

    厚生労働省は、2015年9月の同省プロジェクトチーム「新福祉ビジョン」と昨年6月の閣議決定「ニッポン一億総活躍プラン」を踏まえ、昨年7月に「『我が事・丸ごと』地域共生社会実現本部」を設置しました。地域力強化検討会は、地域共生社会の実現について具体的に検討するために昨年10月に発足しました。厚生労働省は、「最終報告」を待たず、「中間とりまとめ」を踏まえた社会福祉法改正案を今通常国会に提出する予定です。地域共生社会は今や、厚生労働省が「全省あげて取り組む1丁目1番地」とも言われており、「中間とりまとめ」には今後の地域共生社会を考えるヒントが少なくありません。

    ただし、本稿ではそれの網羅的検討は避け、本連載㊽(4773号)で検討した「新福祉ビジョン」との異同に焦点を当てます。「新福祉ビジョン」が厚生労働省各局の代表者のみで策定されたのと対照的に、地域力強化検討会構成員(21人)の過半数は各地でまちづくりや医療・福祉のネットワークづくりを主導している実践家であり、厚生労働省の公式文書とは異なる記述や提言が含まれているからです。

    地域のマイナス面にも言及

    「中間とりまとめ」は「総論」と「各論」の二部構成です。「中間とりまとめ」の副題「従来の福祉の地平を超えた、次のステージへ」は、「福祉の領域を超えた地域全体が直面する課題」(1頁)を直視し、「地域の持続可能性、(中略)共生文化の創出、(中略)地域包括支援体制の構築」(8頁)を目ざすことと理解できます。「新福祉ビジョン」があくまで福祉を基本にして、それを「福祉以外の分野に拡大」(8頁)することを提起していたのに対して、「中間とりまとめ」では(地域)福祉と地域(まち)づくりが同格と位置づけられています。

    私がまず注目したことは、地域を美化せず、「地域共生社会を実現していくためには、社会的孤立や社会的排除といった現実に生じうる課題を直視していくことが必要である」(3頁)等と、地域のマイナス面も繰り返し指摘していることです。ただし、それで悲観論に陥るのではなく、地域共生社会実現に「向けた努力をしていくことが、将来の地域社会、私たち一人ひとりにとって必要であるという高い理想を掲げ」(3頁)、「各論」で「我が事・丸ごと」の地域共生社会実現のための具体的課題を示しているのは大変建設的と思います。

    残り2,158文字あります

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