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「事故調は紛争解決の手段ではない」 - 全国医学部長病院長会議が注意喚起

No.4814 (2016年07月30日発行) P.11

登録日: 2016-07-30

最終更新日: 2016-10-30

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全国医学部長病院長会議が21日に定例会見を開き、昨年10月から医療安全の確保と医療事故の再発防止を目的にスタートした医療事故調査制度について、「紛争解決の手段ではない」と注意喚起した。
会議の「大学病院の医療事故対策委員会」では、制度開始から6カ月の経験を踏まえ、今年4~5月に全国80大学病院に対して運営状況を調査。この中で医療事故調査・支援センターに報告する医療事故の該当性の理解について質問した。法律上の定義は、「医療に起因または起因すると疑われ、予期しなかった死亡・死産」で、過誤の有無は問わず、医療機関の管理者が判断する。この内容について、「十分理解」28大学、「やや理解」42大学、「どちらとも言えない」9大学、「やや不足」1大学という結果となり、70大学(87.5%)が理解していると回答した。しかし、実際の報告事例を精査したところ、遺族とのトラブルの可能性を理由としたものが多い実態が明らかになったという。

●都道府県医師会と密に連携を
調査を踏まえ会議では、事故調の「基本的考え方」として、(1)事故調は医師法21条による警察への届出の代替や紛争解決の手段ではない、(2)報告対象の判断は、医療従事者や遺族の意向、紛争への発展の可能性により左右されてはならない、(3)重篤な障害の残存事例、濃厚な処置・治療を要した事例に対しても必要な調査を行う、(4)医療事故調査等支援団体として、都道府県医師会と連携して他施設からの支援の依頼を受け入れるよう努める、⑤支援団体の協議会を設置する状況においても、都道府県医師会と密に連携する─の5点をまとめ、全国の大学病院に周知する方針。
会見で医療事故対策委員会の中島勧委員(写真、東大)は、「制度を紛争解決に利用している例があるので、法律の趣旨の理解を進めたい」と話した。

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