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ドクターヘリの活用

No.4758 (2015年07月04日発行) P.60

祐森章幸 (横浜市立市民病院救急総合診療科)

森村尚登 (横浜市立大学救急医学教授)

登録日: 2015-07-04

最終更新日: 2016-10-26

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ドクターヘリは,医師・看護師を医療資機材とともに現場へ派遣することで早期に医療を開始できるため,救命率の向上や早期社会復帰に向けた有用な手段のひとつとされる。欧米では,1970年代からヘリコプターによる医療搬送が開始され,平時のみならず災害時にもドクターヘリが活用されている。1998年にドイツで起きた高速列車事故においてもドクターヘリが活用され,外傷患者59名に対して防ぎえた外傷死を1例も出さず,発災2時間以内に分散医療搬送を完了できたと報告(文献1)されている。
わが国では1995年の阪神・淡路大震災発生後の3日間でヘリ搬送が17件にとどまったことから,ドクターヘリの必要性が認識され,全国配備につながった。2001年から本格運用が開始され,2015年4月時点で,37道府県に45機が配備された。2013年度には,ドクターヘリ年間出動件数は約2万500件で,前年度と比較して約3000件増加した。また,所要時間の全国平均は119番覚知からドクターヘリ要請を経て現場到着まで29分,現場滞在時間20分,現場離陸から病院到着まで12分と,迅速な初動対応の実績を上げている。
災害時においても,2011年の東日本大震災では発災翌日までに全国から18機のドクターヘリが被災地に駆けつけ,5日間で約150名の傷病者を医療搬送する活躍をみせた。一方で,指揮命令系統,通信連絡手段,燃料補給,飛行規制など,災害時のドクターヘリ活用に向けての課題があり,さらなる発展に向けて運用・連携の方法について整備する必要がある。

【文献】


1) 河田恵昭:JSCE. 1999;84(7):38-41.

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