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HER2陽性乳癌に対する治療

No.4754 (2015年06月06日発行) P.48

池田 正 (帝京大学外科主任教授)

登録日: 2015-06-06

最終更新日: 2016-10-26

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乳癌は遺伝子サブタイプにより治療方法が異なるが,中でもHER2タイプに対する分子標的治療薬の進歩が著しい。HER2タイプに対する術後補助療法としては,増殖因子受容体膜貫通型蛋白であるHER2受容体に対する抗体であるトラスツズマブが標準的治療となった。さらにここ1~2年の間に,HER2に対する抗体で,HER2/3の重合を阻害するペルツズマブ(パージェタR)と,トラスツズマブに抗癌剤エムタンシンを結合させたT-DM1(カドサイラR)が相次いで承認され,保険収載もなされた。今までHER2タイプの乳癌は予後の悪い乳癌とされてきたが,これらの薬剤の出現により予後が大幅に改善されている。以上のように,現在,HER2タイプ乳癌に対しては複数の分子標的治療薬が使用可能になった。
これらの薬剤の使いわけに関しては,術後の補助療法に関してはトラスツズマブのみが保険適用されている。種々の前向き無作為化比較試験の結果からは,再発乳癌に対する一次治療にはタキサン系とトラスツズマブに加えて,ペルツズマブを上乗せしたほうが副作用は増加せず効果は有意に良かったため,標準治療となっている。二次治療には,標準とされてきたラパチニブ/カペシタビンとT-DM1との比較試験が行われ,T-DM1のほうが無増悪生存期間(PFS),全生存期間(OS)ともに有意に良好であったため,T-DM1が使用されはじめている。ラパチニブ/カペシタビンの組み合わせは今後,第三次治療あるいは脳転移出現時の治療などで使用されることになると思われる。
以上,HER2タイプ乳癌に対する治療は近年,劇的に変化しているが,問題は,これら分子標的治療薬はコストがかかり,一度使用しはじめるといつ中止してよいか,指標がないことである。

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