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再生医療関連二法と医療産業の今後

No.4707 (2014年07月12日発行) P.60

矢﨑雄一郎 (テラ株式会社代表取締役社長)

登録日: 2014-07-12

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

現在,輸血や骨髄移植などの細胞医療が行われていますが,培養など細胞加工(cell processing)を施した細胞を移植する医療,すなわち再生医療は身近な医療の域に達していません。しかし2013年11月,改正薬事法と再生医療安全性確保法,いわゆる再生医療関連二法案が成立し,細胞工場(特定細胞加工物製造事業者)と改正薬事法からの製薬工場の2つの道筋で今後,細胞を加工する医療が産業として発展していくと思われます。そこで,今後一番のポイントになるのは何か,テラ株式会社・矢﨑雄一郎先生のご回答を。
【質問者】
北條元治:株式会社セルバンク代表取締役

【A】

当社は,樹状細胞ワクチン療法の技術・ノウハウを全国の医療機関に提供してきました。樹状細胞ワクチン療法は患者さん自身の細胞(自家細胞)を体外で培養し,がんの目印を認識させ,患者さんに戻す免疫細胞療法の1つです。これまで細胞を用いた治療法については明確な基準がなく,当社は,細胞培養について製造・品質管理に関する厳格な自主基準を設け,さらに医療現場において,医療として安全に患者さんに提供するための体制構築支援を行ってきました。
このたび,再生医療関連二法案が成立・施行されることで,企業が細胞加工業を事業とする環境ができます。そこで,「他家細胞」の医療への応用が必要になると考えられます。
他家細胞に比べて自家細胞は患者さん自身の細胞を用いるため,副作用もなく安全です。しかし,細胞加工業の目的を,より多くの患者さんに細胞を医療として提供すること,医療現場に細胞医療をより普及させることと考えると,細胞を大量に培養することや,自身の細胞が利用できない際に他者の細胞を利用できるようにすることが必要であると考えられます。
そのため,今後は他家細胞を用いた細胞医療を提供するための法整備や研究・技術開発が必要であり,それによって,当社の自家細胞を用いた治療での実績や経験が活かされ,医療現場における細胞医療の発展に寄与するものと考えます。

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