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企画段階から「一貫して関与」認める - データの捏造・改竄は「確認されず」 [「CASE-J 試験」調査結果で武田薬品が会見] 

No.4705 (2014年06月28日発行) P.6

登録日: 2014-06-28

最終更新日: 2016-11-16

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【概要】「CASE-J」を巡る問題で武田薬品工業は20日、記者会見を開き、試験企画段階から一貫して同社が関与していたと発表した。一方、データの捏造・改竄については否定した。


「CASE-J」は心血管系イベントを主要評価項目として、武田薬品工業のARB「カンデサルタン」(商品名=ブロプレス)とCa拮抗薬「アムロジピン」を比較した医師主導臨床試験。両群間で心血管イベント発現率に有意差は認められなかったにもかかわらず、同社が販促資材で両群に差があることを示すグラフを使用していたことが2月に明らかとなり、薬事法違反(誇大広告)などの疑義が生じていた。

●「試験の実質的スポンサー」
20日の会見では、武田薬品工業が調査を依頼した弁護士事務所が第三者委員会として報告書を公表。報告書は、同社社員が「ブロプレスの付加価値最大化」のため、(1)プロトコルの下書き、(2)参加医師の選定、(3)統計解析計画書の作成、(4)学会発表用のスライドの作成―など、試験の企画段階から学会発表まで「一貫して関与していた」としている。
報告書によると、同社は主要評価項目で両群の「有意差なし」とする仮解析結果を受け、「少しでもカンデサルタンに有利な情報を引き出そう」として社内協議を重ね、糖尿病新規発症率の追加解析を事務局の京大EBMセンターに依頼した。しかし、これも有意差が認められなかったため、定義を「登録時糖尿病リスクあり」に変更。第三者委員会は変更により得られた結果は「同社にとって重要な成果だった」と指摘した。また、試験事務局の京大に約37億5000万円の奨学寄付金を提供していたことから、第三者委は「同社は試験の実質的スポンサーだった」と判断。一方、同社によるデータの捏造・改竄などを示す事実は「確認されなかった」とした。

●“ゴールデンクロス”は「誇大広告に該当せず」
会見で質問が集中したのは、販促資材で使用された心血管イベント累積発現率を示すカプラン・マイヤー(KM)曲線が米専門誌(2008年)に掲載された論文と異なる点について。販促資材はKM曲線が36カ月付近で交差する部分を“ゴールデンクロス”と強調。当初高かったカンデサルタン群の発現率がアムロジピン群よりも低くなることを明示していた。
報告書はKM曲線について、京大から同社社員に提供された資料を基に外部業者が作成したとし、(1)両群間に隙間がありカンデサルタン群が低く見える販促資材などに使用されたもの、(2)両群間に隙間がなく論文で使用されたもの―の2種類が存在すると認めた上で、その原因は作成過程で「『ずれ』が生じたため」とした。意図的にずれを生じさせた可能性については、担当社員が聞き取りで「記憶していない」と返答したため「確認できなかった」とした。
ゴールデンクロスの表記が誇大広告に該当するかについて報告書は、グラフにP値が統計学上「有意差なし」を示す0.969と明記されていたことなどから、「両群に有意差があることまでの誤認を惹起させるものということはできない」と判断。「効能以外の効果を謳っているわけではなく該当しない」とした。

【記者の眼】今回の調査では医学的な検討は対象外とされており、不十分な印象は拭えない。田村憲久厚労相もグラフが2種類存在したことを問題視し、同省の調査結果を待ち「どう対応するか決める」との考えを示している。(T)

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