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【識者の眼】「なんちゃって急性期病院の終焉」武久洋三

No.5110 (2022年04月02日発行) P.60

武久洋三 (医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長)

登録日: 2022-03-25

最終更新日: 2022-03-25

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2022年度診療報酬改定ではっきりしたことがある。それは新時代にふさわしい新しい機能別病院の姿である。今までは2014年に発表された高度急性期、急性期、回復期、慢性期という4つの病床機能報告に基づく分類だった。「なんちゃって急性期病院」と言われたり、あいまいな機能の病院が多い。そこに今回は高度急性期病院の持つべき機能を明確に指定したのである。これだけ多くの機能をすべてクリアできる病院がいくらあるだろう。今年の10月では全国で100あるだろうか。

しかし、確かに中途半端な自称急性期病院が散在している現状は、望まれるものではない。人口60万人に1つの高度急性期病院だと、全国に200となる。国民にとっては「どんな病状」でもそこにいけば助けてくれるという病院が、この程度でうまく全国に適材配置されるのは望むところであろう。その200病院が正に「急性期病院」である。あとは地域多機能病院となる。2030年までは、この多機能病院は急性期型多機能病院と慢性期型多機能病院の2つの状況にならざるをえないが、次第にこの2つの機能を包含した地域多機能病院に集約されるだろう。

高度急性期以外の患者のうち特に高齢者の一般的急性期患者の治療は、この地域多機能病院に集約されていく。そして現在、既に各地の公立・公的病院の合併は進んでいる。療養病床だけの病院は、まずは地域包括ケア病棟とリハビリテーション病棟を持って、さらに地域の慢性期急変患者にも対応できる病院に成長しなければ、2030年には病院ではなく、いわゆるナーシングホーム様の介護医療院へ、病院からの転換を余儀なくされるだろう。

将来の日本の医療はどうなるのかなど疑心暗鬼であった医療人にとって、今回の改定は見事なまでに私たちの進むべき道を明らかにしてくれた。そして、病院数は平均在院日数の短縮により、現在の8000から5000へと限りなく近づいていくだろう。病院というところは慢性期であっても障害者病棟以外は、2カ月以上入院する場所ではなくなっていくだろう。

結局、日本の病院は、「急性期病院」と「地域多機能病院」の2つに大別されていく。病院は、この度の厚労省が示した方向に進んでいかなければ、自院の将来像を描くことはできないと悟るべきだ。

武久洋三(医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長)[診療報酬改定]

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