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2022年度診療報酬改定ポイント解説─外来感染対策向上加算は全患者に算定可【まとめてみました】

No.5108 (2022年03月19日発行) P.14

登録日: 2022-03-16

最終更新日: 2022-04-08

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厚労省は3月4日、2022年度診療報酬改定の留意事項や施設基準などについて告示・通知した。同日には保険局医療課による説明動画・説明資料も同省サイトで公開され、新設・見直し項目の取り扱いの詳細が明らかになった。本欄では、特にクリニック経営への影響が大きい項目について解説する。

クリニックに関する主な改定項目を下表に整理した。算定の有無で影響が大きいと見込まれるのは、新興感染症対策推進のために新設された「外来感染対策向上加算」(患者1人につき月1回6点算定)。主な施設基準は、①専任の院内感染管理者が配置、②少なくとも年2回程度、感染対策向上加算1に係る届出を行った医療機関または地域の医師会が定期的に主催する院内感染対策に関するカンファレンスに参加、また、感染対策向上加算1に係る届出を行った医療機関または地域の医師会が主催する新興感染症の発生等を想定した訓練に少なくとも年1回参加、③新興感染症の発生時等に都道府県等の要請を受けて発熱患者の外来診療等を実施する体制を有し、そのことを自治体のホームページで公開─など。

同加算を4月1日から算定する場合、4月20日(水)必着で地方厚生(支)局への届出が必要となる。直前は届出が混み合うことが予想されるため、早めに届出を行うことが大切だ。

外来感染対策向上加算のポイントは、診療を行った全患者に対し算定が可能な点。2021年9月までの時限的措置として設けられていた「感染対策実施加算(5点)」に比べ、算定要件が厳格化されているものの、対象患者は多く、クリニックにとって算定しておきたい点数となる。

感染対策で2つの上乗せ加算も

さらに感染対策の実効性を高めるため、2つの上乗せ加算も新設。1つは、外来感染対策向上加算の届出医療機関が、感染対策向上加算1の届出を行っている他の医療機関に対し定期的に院内の感染症発生状況や抗菌薬の使用状況を報告している場合、患者1人につき月1回3点を算定できる「連携強化加算」。もう1つは、地域や全国のサーベイランス(JANIS、J-SIPHEなど)に参加している場合に患者1人につき月1回1点を算定できる「サーベイランス強化加算」。クリニックも自院での取り組みにとどまらず、積極的な地域連携が求められている。

紹介状作成業務の増加が見込まれる

22年度改定ではさらなる外来機能分化に向けた見直しも行われる。紹介状なしで受診する患者から定額負担を徴収する責務がある医療機関として、現行の特定機能病院と一般病床200床以上の地域医療支援病院に加え、一般病床200床以上の「紹介受診重点医療機関」を新設。対象患者の診療にかかる定額負担の額も見直し、医科の初診は7000円、再診は3000円とする。患者の定額負担が必要となる対象病院の範囲が大きく拡大することになるため、地域のクリニックにおいては、今後紹介状を作成するケースが増加する可能性があり、事務作業の効率化を図る必要がありそうだ。

機能強化加算は要件厳格化

かかりつけ医機能の強化に向けた見直しも行われる。慢性疾患を有する患者に対するかかりつけ医機能の評価を推進する観点から、「地域包括診療料/加算」の対象疾患に慢性心不全と慢性腎臓病が追加。生活面の指導については、医師だけでなくその指示を受けた看護師や管理栄養士、薬剤師も行えるようになる。また地域のクリニックで新型コロナワクチンなど成人への予防接種機会が増えたことから、要件に「患者からの予防接種に係る相談に対応すること」「院内掲示により、当該対応が可能なことを周知する」が追加される。

かかりつけ医機能を持つ診療所が初診時に算定できる「機能強化加算(80点)」は要件を厳格化する。診療実績として「地域包括診療加算2/診療料2の算定患者3人以上」「往診料・訪問診療料の算定回数合計が3人以上」のいずれかを満たす基準を新設。これに加え、必要に応じて「処方されている医薬品の把握、必要な服薬管理」「専門医・専門医療機関への紹介」「健康診断の結果等の健康管理相談への対応」「緊急時対応」などを行い、その旨を院内掲示やホームページ等で示すことも要件化した。

また他の医療機関の求めに応じて診療情報を提出した場合の評価として、「診療情報提供料Ⅲ」の名称を「連携強化診療情報提供料」に変更、算定上限を現行の3月に1回から月1回に変更する。

小児かかりつけ医診療料を巡っては、時間外対応の体制のあり方を考慮した評価体系に見直す。自院で時間外対応できる体制が要件となる同診療料1は、処方箋を交付する場合の初診が現行から10点増の641点となり、再診も10点増の448点を算定できる。処方箋を交付しない場合の初診・再診もともに10点増となる。

継続診療加算を名称変更、下位区分新設

かかりつけ医の在宅医療への取り組みをさらに推進するための見直しも行われる。現行の「継続診療加算」を「在宅療養移行加算」に名称変更。24時間往診と連絡体制について、同加算1(216点)は「24時間往診体制および24時間連絡体制を有する」、同加算2(116点)は「24時間連絡体制を有する」ことが要件化、取得しやすい下位区分が新設された。

【関連情報】

2022年度診療報酬改定関係告示・通知・説明資料など(厚生労働省ウェブサイト)

【関連動画】

クリニック医師が知っておくべき 診療報酬改定2022のポイント① 感染症対策/外来医療(小松大介)
クリニック医師が知っておくべき 診療報酬改定2022のポイント② オンライン診療/在宅医療(小松大介)
クリニック医師が知っておくべき 診療報酬改定2022のポイント③ 診療所が取るべき対応(小松大介)

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