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【識者の眼】「総合診療医、家庭医は不人気でレベルの低い医師か、スーパードクターか?」草場鉄周

No.5102 (2022年02月05日発行) P.61

草場鉄周 (日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)

登録日: 2022-01-24

最終更新日: 2022-01-24

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引き続き、厚労省医政局総務課が所管する「かかりつけ医機能の強化・活用にかかる調査・普及事業検討委員会」での議論を踏まえて見えてくる総合診療に関する様々な論点を考えていきたい。

議論の中で語られるのは「フランスなどでは医師国家試験上位者から脳外科医などの臓器別の専門研修が選ばれ、下位の者がやむをえず選択するのが家庭医であり、不人気で診療レベルの低い医師グループとみなされている」という意見が1つある。その一方で、「日本で幅広い領域をしっかり学んで、総合診療医や家庭医として勤務する医師達はスーパードクターであり、とても一般の医師達が到達できるものではない」という意見も語られる。これが、別の方が語るのならまだしも、同じ方が語られるので非常に悩ましい。

先の意見から導き出される結論は、「諸外国で比較的定着している総合診療や家庭医療は日本で提供されている医療よりレベルが低いものであり、日本には導入すべきではない」ということであり、後の意見から導き出される結論は、「日本で望まれる真の総合診療や家庭医療は、日本の一般の医師が提供することは難しく、日本で普遍的な制度として定着させることは困難で導入することはできない」ということである。つまり、いずれも現在の医療制度を維持することにつながる論旨である。

これは真実であろうか。米国、英国、デンマーク、オランダ、カナダなど欧米で制度として総合診療・家庭医療が定着する国では30〜50%程の医師が無理なく専門医として従事しており、国民からの信頼も厚い。つまり、真実は上記の2つの意見の中間にある。関心を示す医師も十分にあり、医療レベルもほとんどの医師が研修を通じて十分取得できるものである。循環器内科、消化器外科を志すことと基本的に大きな違いはない。むしろ医師の志向性の問題である。

医療について日本がガラパゴス化することは避けるべきである。医療を伝統芸能のようにとらえず、科学と社会環境に応じて柔軟に変えるべき社会制度として議論することが重要だ。大切なものを変えないために変わる勇気を持つことが必要だと思う。

草場鉄周(日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)[総合診療/家庭医療]

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