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【識者の眼】「個人/患者と医療をつなぐICT」土屋淳郎

No.5096 (2021年12月25日発行) P.62

土屋淳郎 (医療法人社団創成会土屋医院院長、全国医療介護連携ネットワーク研究会会長)

登録日: 2021-12-06

最終更新日: 2021-12-06

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最近では個人や患者本人がアプリやICTのシステムを用いることが多くなってきた。例えば個人で健康情報を管理するPHR(Personal Health Record)では、日頃の体重や血圧、活動量などのデータのほか、健康診断や医療機関で行った検査結果などを管理することができるし、日々の気付きや予防接種の記録などを保管することもできる。また、医療機関への受診を検討する際にはAIを用いた受診相談をすることもできるし、受診前に各医療機関が利用するWEB問診システムを利用し、受診時にオンライン診療システムを利用することもできるようになってきた。そして、在宅患者のバイタルデータ等を自動転送させ、その経過を医療機関で閲覧できるようにしたシステムや、患者や家族が参加できる機能を持つ多職種連携システムもある。

さらにCureApp1)は治療用アプリを「処方する」取り組みをしている。既に保険適用されている「ニコチン依存症治療アプリおよびCOチェッカー」や、近く保険適用されると言われる高血圧治療用アプリなどがあり、今後は治療用アプリが増えてくるだろう。その他にも、心電図を記録できるApple Watchのように、医療・介護の現場でも利用されるウエアラブルデバイスやセンサーなども多くなり、それに連動するアプリやシステムも増えてくるだろう。

そこで、全国医療介護連携ネットワーク研究会(以後、医介連)では、個人/患者情報の管理や関係性の構築を「PRM(Personal & Patient Relationship Management)」と呼び、今後はこのPRMに関するアプリやシステムが重要になると考えている。個人/患者がアプリやシステムを利用するだけではなく、医療系のシステムとも連携・連動が必要になるだろうし、健康な時から終末期にかけて多くのステージに関わるかかりつけ医がシンプルに利用できるようなシステム構築も必要だろう。また、PRMにおいてはデータ管理に関して述べられることが多いが、医介連では「コミュニケーション」がより大切になると考えている。必要な時はオンライン診療のようにリアルタイムで、そうでないときはそれぞれのタイミングで情報を確認する非同期コミュニケーションを利用するなど使いわける必要もあると考えている。さらにアドバンス・ケア・プランニング(ACP)のように長期間にわたるコミュニケーションと情報共有も必要になるだろう。

個人/患者と医療をつなぐICTは、今後の医療におけるICT利用の1つの大きな分野になると考えており、医介連の考えるPRMが役立つことを願っている。

【文献】

1)https://cureapp.co.jp/

土屋淳郎(医療法人社団創成会土屋医院院長、全国医療介護連携ネットワーク研究会会長)[ICT][PRM]

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