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【識者の眼】「薬機法改正による課徴金制度導入の意味」大野 智

No.5081 (2021年09月11日発行) P.59

大野 智 (島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)

登録日: 2021-09-02

最終更新日: 2021-09-02

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筆者が補完代替療法との関わりを持ち始めた約20年前、健康食品業界では「薬事法(当時)違反でも罰金は最大で300万円。結局、それ以上に儲けていれば会社としては利益が出ている。そして、同じ人物が看板だけ替えて新しい会社を立ち上げれば、同様のことが繰り返されるだけ」とまことしやかに噂されていた。

その旧薬事法は、2014年、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下、薬機法)に名称が変わり、2019年に一部が改正されたことに伴い、2021(令和3)年8月1日から課徴金制度が導入された。具体的には、医薬品、医療機器等の名称、製造方法、効能、効果または性能に関する虚偽・誇大な広告を行った場合、原則、違反を行っていた期間中における対象商品の売上額の4.5%が課徴金として賦課される仕組みである。

ことの発端は、高血圧症治療薬ディオバンの効果に係る臨床研究においてデータ改竄が行われ、これを基にした学術論文や販売促進用資材が問題となり、さらに薬機法第66条の誇大広告にも当たるとして刑事告訴がなされたことである。さらに厚生労働省は、健康食品(薬機法上では“無承認無許可医薬品”)に対しても、医薬品的効能効果を標榜して広告及び販売を行い、警察に検挙されるケースが後を絶たない問題点も今回の改正にあたって指摘している。

薬機法改正で注目された課徴金制度は、導入当初は違法に得た利益を行政的に剥奪することを意図したものであったが、現在は違反行為の摘発に伴う不利益を増大させて、その経済的誘引を減少させ、違反行為の予防効果を強化することを目的とする行政上の措置と位置づけられている。健康食品を含む補完代替療法領域では、2016(平成28)年には既に景品表示法において課徴金制度が導入されており、優良誤認表示・有利誤認表示に対して売上額の3%が課徴金として賦課される。

冒頭の噂話ではないが、補完代替療法に関わる企業(宣伝・広告に関わるメディア等も含む)は、課徴金制度の本来の意味を十分に理解し、健全な経済活動を行ってほしい。

大野 智(島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)[統合医療・補完代替療法

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