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コロナ禍で考える医療提供体制の構築[炉辺閑話]

No.5045 (2021年01月02日発行) P.17

鶴田憲一 (全国衛生部長会名誉会長)

登録日: 2020-12-30

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昨年は新年早々からコロナ感染症対策に振り回された。コロナは様々な影響を全世界にもたらしているが、医療機関ではコロナ患者を受け入れれば受け入れるほど、医療経営が厳しくなった。コロナ患者受け入れに後ろ向きで、批判される自治体病院もあったが、こうした時こそ積極的に受け入れるのが、公費からの支援を受けて医療を行う病院の責務であろう。

これまで、「地域医療構想」、「働き方改革」、「医師偏在対策」の三位一体改革が言われてきたが、コロナの教訓をふまえて、根本的な視点から医療提供体制を見直しては如何だろうか。

医師不足一つとっても、昔は毎年500人に1人が医学部に入学し、今では100人未満に1人が入学できる異常な医学部定員にもかかわらず、医師不足感が強調され、定員削減の見通しがつかない。

高齢社会では今まで提供してきた医療が適正であったのか? サロン化した外来と言われることもあった。外来で馴染みの患者がいないとあの人はどうしたのか? 病気が悪くなったのではないか? と揶揄する市井の会話もあった。ほぼ同じような状態でも病院では患者であり、施設では入所者である。

コロナ禍、病院に行くと感染するのではないか、との懸念から受診抑制が生じていると言われるが、そもそも、どのくらいの人は受診しなくても良かったのか? 本当に医療が必要な人が受診し、治療を受け、社会復帰し、しかも医療機関の経営が成り立つ医療提供体制とはどのようなものか? 医療業務を棚卸し、医療業務とその他業務、医療業務も医師と他の職種との役割分担をし、かつ、投入可能な医療資源、医療費の中で提供できる適正な医療とはどのようなものか、考える必要があるのではないか? 人の命は地球より重いからと無制限なサービス提供はできない。群盲象を撫でるような複雑な医療システムであり、解決することは簡単ではないが、ポストコロナ、ウィズコロナ時代における国民的合意ができるような医療提供体制の構築を期待したい。

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