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【識者の眼】「これまでピルが飲めなかった方も飲める薬が発売されました」柴田綾子

No.5036 (2020年10月31日発行) P.56

柴田綾子 (淀川キリスト教病院産婦人科副医長)

登録日: 2020-10-07

最終更新日: 2020-10-08

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低用量ピル(避妊ピルや低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤)は、月経痛/月経量/月経不順の改善、避妊、ニキビ改善、卵巣癌/子宮体癌リスクの低下など、たくさんの効果がある薬です。一方で、低用量ピルの副作用である血栓症リスクのために、内服できない方が多くいるのも事実です。例えば以下のような方は、低用量ピルは禁忌となっています。

低用量ピルの禁忌の一部1)

・前兆のある偏頭痛

・産後4週間以内または授乳中

・35歳以上で1日15本以上の喫煙

・手術前4週間、術後2週間以内

・重度の高血圧/糖尿病

実は2020年1月に、血栓リスクのほとんど無いホルモン剤であるジエノゲスト(ディナゲスト)に0.5mgの新規格が追加され「月経困難症」に使用できるようになりました。ジエノゲストは、以前から子宮内膜症・子宮腺筋症の治療に使用されていた経口黄体ホルモン(プロゲスチン)ですが、今年からは月経痛の改善を目的に処方することができます(用量は子宮内膜症の治療量2mg/日より少なく1mg/日となる)。ジエノゲストは、卵巣機能と子宮内膜細胞増殖を抑制することで月経痛を改善します。多い副作用は不正出血と更年期様症状です。今まで血栓リスクがあり低用量ピルを使用できなかった月経痛の患者さんにも、このジエノゲストは使用可能です(禁忌は原因不明の性器出血、妊娠、アレルギー、高度な子宮腫大/貧血)。血栓リスクのある患者さんの月経痛/過多月経の治療選択肢としては、子宮内に挿入する避妊具の一つの黄体ホルモン放出システム(ミレーナ)などもあります。

ジエノゲストには避妊の適応はありませんが、黄体ホルモンのみの避妊ピル(Progestogen-Only Pill)は「ミニピル」と呼ばれ、海外では血栓リスクのある方や、産後や授乳中の方の避妊法として広く使われています1)。残念ながら日本では国内で承認されたミニピルはありません。日本でも早く黄体ホルモンのみの避妊ピルが使えるようになってほしいです。

【文献】

1)American College of Obstetricians and Gynecologists. Progestin-Only Hormonal Birth Control:Pill and Injection.

   [https://www.acog.org/patient-resources/faqs/contraception/progestin-only-hormonal-birth-control-pill-and-injection]  

柴田綾子(淀川キリスト教病院産婦人科副医長)[月経困難症]

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