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【識者の眼】「『安定確保医薬品』の創設」安部好弘

No.5035 (2020年10月24日発行) P.49

安部好弘 (日本薬剤師会副会長)

登録日: 2020-10-07

最終更新日: 2020-10-07

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2020年9月、我が国で「安定確保医薬品」という新しい概念が登場した。厚生労働省医政局経済課の「医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議」において、医薬品の安定確保に関する考え方や方策について本年3月より計4回の議論が行われ、その「取りまとめ」において「医療上必要不可欠であって、汎用され安定確保が求められる医薬品であって、我が国の安全保障上、切れ目のない医療供給のために必要で、安定確保について特に配慮が必要とされるもの」と位置づけている(会議の取りまとめ概要〔下掲〕は厚労省サイトに掲載https://www.mhlw.go.jp/content/10807000/000676423.pdf)。

今後の具体的な取り組みとしては、「安定確保医薬品」を対象疾患や代替薬の有無などにより分類し、3つのステージ「(1)供給不安を予防するための取組(2)供給不安の兆候をいち早く補足し早期対応に繋げるための取組(3)実際に供給不安に陥った際の取組」において、医薬品の製造・流通・医療現場での状況に応じた具体的な対応を順次進めていくことになる。

現在、医薬品(とりわけ薬価収載されたもの)の安定供給に関する責務は、行政による一定の関与の中、製造販売業者が一義的かつ自主的に負う仕組みとなっている。今後、安定確保医薬品をはじめとして、欧米での取り組みに見られるように一定の規制も検討されることが予想される。その際に、国や行政の権限や取り締まりを強化するという姿勢ばかりではなく、安全保障や産業育成政策のグローバルな視点から医薬品製造・流通の体制を支える施策を構築する必要があろう。

例えば、厚生労働省では「医薬品安定供給支援事業」が開始され、経済産業省では、東南アジアでの拠点確保に関する「海外サプライチェーン多元化等支援事業」が始まっている。これらの事業が省を超えて連携し、国の安全保障の観点から総合的な施策が整備されることを期待したい。また、医療従事者の観点では、「安定確保医薬品」という新たな医薬品の社会的位置づけの趣旨を理解し、医薬品の適正使用や節度ある流通のありかた等についてこれまでの議論をより深める必要があろう。

安部好弘(日本薬剤師会副会長)[薬事・薬剤師]

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