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(3)S-ICD留置後の問題と今後の展開─車の運転制限も含めて[特集:完全皮下植込み型除細動器(S-ICD)の仕組み]

No.4950 (2019年03月09日発行) P.42

丸山将広 (近畿大学医学部循環器内科学)

登録日: 2019-03-11

最終更新日: 2019-03-06

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完全皮下植込み型除細動器(S-ICD)にも従来の植込み型除細動器(ICD)と同様に不適切ショックが起こりうるが,2ゾーンでの頻拍感知基準,T波を除外するフィルター設定などが広く使用されるようになり,従来のICDと比較して決して劣らないことがわかった

S-ICD留置後の合併症において,菌血症やリードによるものは少ないとされる

道路交通法改正により,法令を厳守しない運転に関する罰則は強化されたが,科学的根拠に基づき,ICD留置後の運転制限は緩和されつつある

1. 不適切作動

「不適切作動」とは,上室性頻拍(心房細動など)や筋電位・T波などを植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator:ICD)が心室頻拍(ventricular tachycardia:VT)・心室細動(ventricular fibrillation:VF)と誤認識し,治療を行ってしまうことを言う。不適切作動は従来の経静脈植込み型除細動器(transvenous ICD:TV-ICD)でも重要な課題として認識され,それを鑑別するために多くの優れたアルゴリズムが開発され最近ではかなり減少している。完全皮下植込み型除細動器(subcutaneous ICD:S-ICD)では,皮下リードの先端とコイル,そしてジェネレータ間の3つのベクトルを用いた心電図のいずれか1つが選択され,洞調律中のテンプレートと頻拍時の電位を比較し,QRS波形を認識する(植込み前のスクリーニングについては別稿を参照)。脈拍によって2ゾーン設定が可能であり,比較的遅いゾーンでは心電図の幅と波形をテンプレートと比較し,上室性頻拍やT波のオーバーセンシング(体外からの電流等をデバイスが自己の心電位だと誤認識してしまうこと)による誤認識を避けるようになっている。このように,S-ICDは,皮下で記録された心電図(心室波形)のみに依存したアルゴリズムであり,発売当初から不適切作動が多発するのでは,という懸念があったが,2ゾーン設定の標準化により,不適切作動率は1年間で8.1%,3年間で11.7%と決して高い数字ではなかった1)

さらにT波過剰感知を除去するフィルターを使用した最近の研究では,不適切作動率は1年間で4.3%まで低下した(図1)2)。これはTV-ICDでの最近の研究での不適切作動率が1年で2.3~5%であること3)4)を考えると,S-ICDの不適切作動率は同等であると考えられる。

    

大規模臨床試験であるEFFORTLESS studyにおける不適切ショックの要因の割合は,上室性頻拍(13.6%),T波のオーバーセンシング(24.6%),自己脈の低電位感知によるオーバーセンシング(42.4%)となっている5)。植込み前はもちろんのこと,植込み後にも安静時や運動負荷時にどの誘導が最も認識に適したベクトルであるか,筋電位などの混入がないかを判断する必要がある。筋電位の除去が難しい場合は,運動制限を要することもある。また,S-ICDの最も良い適応とされるBrugada症候群では,ダイナミックなST-T変化が生じ,T波のオーバーセンシングの可能性があり,注意が必要である。

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