心房細動(AF)例に抗凝固療法(OAC)の適応がある場合、経皮的左心耳閉鎖術(LAAC)はOACの代替治療となりうるだろうか―。
昨年11月の米国心臓協会(AHA)で報告されたランダム化比較試験(RCT)"CLOSURE-AF"は、LAACのOACに対する非劣性を証明できなかった。しかしこの結果と真逆のRCTが、3月28日から米国・ニューオーリンズで開催された米国心臓病学会(ACC)第75回学術集会で発表された。"CHAMPION-AF"である。ロス・ロブレス地域医療センター(米国)のSaibal Kar氏が報告した。"CLOSURE-AF"との違いにも着目しながら、紹介したい。
【対象】
CHAMPION-AF試験の対象は、CHA2DS2-VAScスコア「2点以上男性」と「3点以上女性」のうち、長期間の直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)服用が適していると判断された3000例である。日本を含む世界16カ国の141施設から登録された。
CLOSURE-AF試験と異なり「出血高リスク/OAC禁忌」は導入基準とされていない。一方「左室駆出率<30%」例はCHAMPION-AF試験でのみ、除外されている。「CLOSURE-AF試験のほうが対象は高齢でフレイル」と指定討論者のPamela K. Mason氏(米国・UVAヘルス)はコメント。
その結果、対象患者はCLOSURE-AF試験に比べ「若年」(平均年齢72 vs. 78歳)。さらに導入基準の関係でHAS-BLEDスコアが低い(平均1.3 vs. 3.0)のは当然として、CHA2DS2-VAScスコアも低値だった(平均3.5 vs. 5.2)。またAFは69%が「発作性」だった(CLOSURE-AF試験は不明)。なおCHAMPION-AF試験では対象の48%に「アブレーション施行歴」があった(CLOSURE-AF試験では除外)。
パネルディスカッションでこの点に触れたJose Joglar氏(米国・UT サウスウェスタン医療センター)は、「RCT"ALONE"と"OCEAN"の結果に照らすと、CHAMPION-AF試験対象のどれほどがOACを必要としていたのか疑問が残る」旨コメントしている。両RCTにより、AFアブレーション成功例ではOACを安全に中止できることが明らかになっているためである。
【方法】
これら3000例はWATCHMAN FLXを用いたLAAC群とDOAC群にランダム化割り付けされ、3年間、盲検化されることなく観察された(CLOSURE-AF試験の対象群ではDOACに加えビタミンK拮抗薬も使用可)。
【結果】
その結果、有効性1次評価項目である「心血管系死亡・脳卒中・全身性塞栓症」の発生ハザード比(HR)は、LAAC群でDOAC群に比べ、有意ではないものの1.20の高値だった(95%CI:0.87-1.66)。ただし、DOACに対するLAACの「非劣性」は確認された。なお発生率は「4.8 vs. 5.7%」で、両群とも当初想定していた「12.5%」の半分にも満たない。検出力不足のため、見かけ上「非劣性」となった可能性を、Kar氏は指摘している(記者会見)。
対照的に、安全性1次評価項目の「手技に関連しない大出血・要対応非大出血」は、LAAC群でHRが0.55の有意低値となっていた(95%CI:0.45-0.67)。治療必要数は「13/3年」である(「大出血」のみでは有意差とならず)。ちなみにCLOSURE-AF試験では「手技関連出血」も、評価項目としての「出血」に含まれていた。
【考察】
最大の関心は、CLOSURE-AF試験との違いだろう。以下、記者会見における考察を紹介する。
指定討論者のMason氏はまず、両試験間で対象となった集団が異なる点に注意を促した(このデータは上述)。加えて、デバイスの違いが影響した可能性もあるという。すなわち、CHAMPION-AF試験でLAACに用いられたのは、2023年に米国で承認されたWATCHMAN FLX一択だった。翻ってCLOSURE-AF試験では、WATCHMAN FLX(44%)に加え一世代前のWATCHMAN 2.5やAmplatzer(Cardiac Plug/Amulet)も第一選択とされていた。
また両試験間で、LAAC術者の技量に大きな差があった可能性もある。CLOSURE-AF試験では参加可能施設に「LAACの経験がある」という縛りがかかっていたのみだが、CHAMPION-AF試験における術者は、WATCHMAN(FLX)トレーニングプログラムの修了者のみに限られていた[Am Heart J. 2023]。事実、両試験の周術期有害事象には大きな差が見られる。すなわち、CHAMPION-AF試験における術後7日間の重篤有害事象発生率は1%弱のみだったのに対し、CLOSURE-AF試験では5.7%だった。
前出Joglar氏は、実際の患者がCLOSURE-AF、CHAMPION-AF試験参加例のいずれに近いかを見きわめる必要があると釘を刺していた。なお記者会見では「DOACとLAACのコスト比較も必要ではないか」との声も上がった(Kar氏はこれにコメントせず)。この点も重要と思われる。
CHAMPION-AF試験はBoston Scientificから資金提供を受けて実施された。同社は試験デザイン作成と試験進捗監督にも関わり、データ収集と統計解析を担当した(CLOSURE-AF試験ではドイツ心臓血管研究センターが資金提供)。
本研究は報告と同時に、NEJM誌に掲載された(原著者34名中5名はBoston Scientific所属)。