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乳房再建術の最近の進歩 [学術論文]

No.4706 (2014年07月05日発行) P.32

淺野裕子 (亀田総合病院乳腺センター乳房再建外科)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-28

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  • 乳癌に対する治療法の選択肢が増え,術後の乳房変形も多様化してきている。形成外科が行う乳房再建の術式も,有茎筋皮弁法や遊離組織移植法などに加えて,2012年9月に薬事承認を得たシリコンゲル充填人工乳房を使った乳房再建術が保険適用となった。これからの乳癌手術は根治性だけでなく整容性も求めていくことが必要不可欠であり,乳房再建術を希望する患者はさらに増加していくと推測される。本稿では乳房再建術の中で薬事承認された人工物を用いた方法と,新しい技術である脂肪幹細胞を用いた方法を中心に紹介する。

    1. QOL向上を視野に入れたこれからの乳房再建術

    乳癌に対する外科的治療は,胸筋を合併切除する定型的乳房切除術から胸筋を温存する非定型的乳房切除術へ,さらに乳房温存手術や皮下乳腺全摘術へと変遷してきた。またセンチネルリンパ節生検が普及し,温存手術後の放射線照射など治療の選択肢が増えるとともに,術後の乳房変形も多様化してきている。一方で,形成外科が行う乳房再建の術式も,有茎筋皮弁法や遊離組織移植法などに加えて,2012年9月に薬事承認されたシリコンゲル充填人工乳房を用いた再建術が保険適用となった。脂肪組織由来幹細胞(adipose-derived stem/stromal cell:ASC)を利用した脂肪移植法なども既に諸外国から報告されている。
    わが国の乳癌罹患率が増加し,外科手術後のQOL向上を求める患者の声が高まってきている中で,これからの乳癌手術は根治性だけでなく整容性も求めていくことが必要不可欠であり,乳房再建術を希望する患者はさらに増加していくことが推測される。本稿では乳房再建術の中で,薬事承認された人工物を用いた方法と,新しい技術である脂肪幹細胞を用いた方法を中心に述べたい。

    2. 乳房再建術の分類

    乳房再建術は手術の時期と回数によって下記のように分類される。
    ①手術の時期による分類
    一次再建:乳癌手術と同時に行う方法。
    二次再建:乳癌手術とは別の時期に後から行う方法。
    一次再建の適応は,術前診断においてステージⅡ以下で皮膚浸潤,大胸筋浸潤や高度のリンパ節転移を認めない症例となる。一次再建のメリットは,患者にとって乳房の喪失感が少なく社会復帰できること,手術の回数を減らせることである。一方で,手術後の病理検査で乳癌の残存があった場合にどうするかが問題となる。術前から乳腺外科医と形成外科医とが連携して治療にあたることが必要になる。
    ②手術の回数による分類
    一期的再建:1回で乳房マウンドを再建する方法。
    二期的再建:‌先に組織拡張器(ティッシュ・エキスパンダー)を挿入して皮膚を伸展させて,後から自家組織または人工物に入れ替える方法。

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