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「乳癌診療ガイドライン2013年版」改訂のポイント [学術論文]

No.4699 (2014年05月17日発行) P.32

和泉宏昌 (国立がん研究センター東病院乳腺・腫瘍内科)

佐々木正興 (国立がん研究センター東病院乳腺・腫瘍内科)

向井博文 (国立がん研究センター東病院乳腺・腫瘍内科医長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-04-05

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  • ガイドラインの利用に際しては,患者の臨床像の多様性・複雑性を十分考慮に入れ,画一的に内容を当てはめるのではなく,患者ごとの慎重な判断が必要である。また,標準治療とは「臨床試験,臨床経験などの結果から,その時点で最も効果的で安全と考えられる治療」をいう。時間の経過とともに臨床試験成績や臨床経験が新たに蓄積されるため,ガイドラインの内容は定期的に改訂されるものである。

    1. 乳癌診療は進歩を遂げている

    「乳癌診療ガイドライン」は,厚生労働科学研究費補助金事業「科学的根拠に基づく乳がん診療ガイドライン作成に関する研究」を日本乳癌学会が引き継ぎ,2004年からは同学会が主体となって策定している。以来,既に薬物療法は4回,その他の分野は3回の改訂を経て,現在,2013年版が刊行されている。2011年からは2年に1回の改訂になっているが,これは昨今の乳癌診療における医療技術や薬物療法の進歩,エビデンスの創出が目覚ましい中で,診療の質の向上と均霑化を達成していくためである。
    前回のガイドラインからの変更点と変更された理由を本稿で整理したい。特に日常診療において高頻度に遭遇する事象に関する重要指針や現在の社会情勢に深く関わる改訂ポイントに絞り,具体的にCQ(clinical question)を提示しつつ概説する。

    2. 2013年版は日本の実情を反映したガイドラインである

    「乳癌診療ガイドライン2013年版」(以下,2013年版)は「日本の実情を反映した使いやすいガイドラインをめざして」の方針のもと,①「検診・診断」と一括りにしていた領域を「検診・画像診断」と「病理診断」に分割,②日本からのデータ,エビデンスをより重視した記載,③外科療法を除く全分野で総論を記載,④推奨グレードの決定に際し,エビデンスは重視するものの種々の臨床的因子を加味して判断,を特徴として改訂されている。

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