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婦人科疾患に対するロボット支援下手術のメリット,デメリット【開腹術に比べて低侵襲性は明らか。費用等のデメリットも今後解消されていく見込み】

No.4906 (2018年05月05日発行) P.57

金尾祐之 (がん研有明病院婦人科副部長)

小林裕明 (鹿児島大学大学院医歯学総合研究科生殖病態生理学/医学部産科婦人科教授)

登録日: 2018-05-02

最終更新日: 2018-04-26

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  • 現在,婦人科悪性疾患領域においてもロボット支援下手術が導入されてきています。(腹腔鏡手術と比較した場合)婦人科疾患に対する手術におけるロボット手術のメリット,デメリット,並びに今後の展望について鹿児島大学・小林裕明先生にご教示頂きたく存じます。

    【質問者】

    金尾祐之 がん研有明病院婦人科副部長


    【回答】

    米国では子宮癌の約85%がロボットで手術されていますので,わが国はかなり遅れをとっていますが,2018年4月から子宮体癌に対する根治術と良性疾患に対する子宮摘出術が保険収載されることになりました。開腹術に比べるとロボット手術の低侵襲性は明らかで,小さな術創,少ない出血量,短い入院期間などの恩恵をもたらしますが,腹腔鏡との比較では優越性を示せない点もあります。

    現在,一番エビデンスがあるのが子宮体癌ですが,腹腔鏡手術とのランダム化比較試験で手術時間と開腹移行率がロボット手術で有意に優れる(摘出リンパ節数,出血量,入院期間,合併症は差なし)とする報告や,開腹移行率,合併症,出血量,入院期間で優る(手術時間,輸血率,リンパ節摘出数は差なし)とする報告などがあります。子宮頸癌に対する広汎子宮全摘出術に関しては,腹腔鏡手術と比較して手術時間,出血量,入院期間,摘出リンパ節個数,合併症などに差がないとする報告が多いのですが,ダヴィンチシステムの拡大視野や手振れ防止機能などを考えると,排尿関連神経の温存に関しては腹腔鏡より容易と思われます。腹腔鏡よりラーニングカーブが短いのは明らかですので,手技が複雑な術式ほど,将来的にはロボット手術の有用性が報告されると思われます。卵巣癌に関しては,早期例に対するステージング手術や進行例に対する腫瘍減量術への応用が考えられますが,現時点で開腹術や腹腔鏡手術と比較したランダム化試験はありません。今後は臨床試験としてステージング手術からロボットの有用性を検討すべきで,実臨床ではまだ勧められないと思います。

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