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ガドリニウム造影剤による副作用の出現頻度と症状は?【腎機能低下例で腎性全身性線維症が生じる。腎機能正常例では副作用の報告はないが,体内にガドリニウムが蓄積している】

No.4904 (2018年04月21日発行) P.58

神田知紀 (神戸大学医学部附属病院放射線科)

登録日: 2018-04-20

最終更新日: 2018-04-16

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肝細胞癌の術後経過観察に年2回のガドリニウム(ガドキセト酸ナトリウム:プリモビスト®)造影MRIを行っていますが,最近,以下のような使用上の注意が出されています。「ガドリニウム造影剤を複数回投与した患者において,非造影T1強調MR画像上,小脳歯状核,淡蒼球等に高信号が認められたとの報告や脳の剖検組織からガドリニウムが検出されたとの報告があるので,ガドリニウム造影剤を用いた検査の必要性を慎重に判断すること」。ガドリニウム造影剤による副作用の症状および出現頻度についてご教示下さい。

(長崎県 A)


【回答】

ガドリニウムは重金属であり,水俣病を引き起こした水銀やイタイイタイ病を引き起こしたカドミウムと同じように,生命に対して有毒とされています。ガドリニウム造影剤はガドリニウムの毒性を下げ,尿とともに排泄されるようなキレート構造を付与されて投与されます。

腎機能が悪い人にガドリニウム造影剤を投与すると,投与されたガドリニウムは尿とともに排泄されずに体内に残ってしまいます。体内に長く残留したガドリニウムは人体に有毒となります。これを腎性全身性線維症(nephrogenic systemic fibrosis:NSF)と呼び,症状としては四肢に「オレンジの皮様」と呼ばれる皮膚の硬化を生じ,手足が動きにくくなります。症状が重篤になると手足が動かせずに寝たきりとなり,死に至ります。このため,腎機能が悪い人にはガドリニウム造影剤の投与は慎重に行う必要があります。頻度ははっきりとわかっていませんが,現在までに世界中で数百人規模で発症しています。

一方,腎機能が正常な人にガドリニウム造影剤を投与しても,尿とともにほとんど排泄されます。ところが,最近の研究で腎機能が正常な人でも体内に徐々にガドリニウムが残留していることがわかり,ガドリニウム造影を繰り返し行うと,腎機能が正常な人にもNSFを生じるのではないかという懸念が起こりました。このため,2017年11月の添付文書改訂で「ガドリニウム造影剤を用いた検査の必要性を慎重に判断すること」という記載が追記されることとなりました。

今のところ腎機能が正常な人に関しては,ガドリニウム蓄積による副作用は報告されておらず,副作用の頻度や症状はわかっていません。プリモビスト®は発売されてまだ10年程度,ガドリニウム造影剤で30年程度ですが,数十年も投与を続けた場合,ガドリニウムが徐々に蓄積してNSFを引き起こす可能性が残っています1)2)

ご質問に戻りますが,肝細胞癌という原疾患を考えると,出るか出ないかわからない副作用より命の危険性が高く,年2回のプリモビスト®造影MRIは必要な検査です。今までに50回程度投与している人も多く,ガドリニウムのわずかな蓄積を考慮しても,20年間は安全に検査を受けることができます。

【文献】

1) Kanda T, et al:Jpn J Radiol. 2016;34(1):3-9.

2) Taoka T, et al:Magn Reson Med Sci. 2018 Jan 25. [Epub ahead of print]

【回答者】

神田知紀 神戸大学医学部附属病院放射線

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