株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

日本医学会連合が公開シンポ開催【加熱式たばこの健康影響】

No.4903 (2018年04月14日発行) P.21

登録日: 2018-04-05

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

たばこ販売大手各社が宣伝に注力し、今年中には国内たばこ市場シェアの2割を超えると予想される「加熱式たばこ」(用語解説)。その健康影響をテーマに、日本医学会連合(門田守人会長)が3月25日、都内でシンポジウムを開催。医療関係者ら約300人が参加した。有害性の評価や禁煙治療での留意点に関する演者の発言を中心に取り上げる。

加熱式たばこの販促資材では、しばしば「有害物質の量が紙巻たばこより90%少ない」などと謳われている。その科学的妥当性について、欅田尚樹氏(国立保健医療科学院)は、加熱式たばこから発生するエアロゾルに含まれるタバコ特異的ニトロソアミンや一酸化炭素(CO)などの濃度は「紙巻たばこより低減されている」と認めつつ、「ニコチンは半分から同程度含まれており、紙巻以上の濃度を示す有害物質もある」と説明した。

呼吸器内科専門医の瀬山邦明氏(順天堂大)は、加熱式たばこを約半年にわたり1日20本、その後2週間は1日40本吸い、急性好酸球性肺炎になった症例を紹介。「加熱式たばこでも、重度喫煙の場合は紙巻たばこと同様の症状が認められる」と述べた。

■切替えで室内喫煙を始める者も

販促資材では「副流煙が出ない」点も強調される。これに関して、大和浩氏(産業医大)は、口腔から肺胞までの経路(解剖学的死腔)の空気150mLはそのまま呼出されるため「加熱式たばこでも本人が吸入したのと同じ濃度のエアロゾルで二次曝露が発生する」と断じた。さらに複数の実験映像を示しつつ、呼出されたエアロゾルは2m以上届き、室内汚染も生じることを提示。「加熱式たばこに切り替えたことで、家庭内で吸い始める事例が増えている。気管支喘息やシックハウス症候群の増加が懸念される」と述べ、紙巻たばこと共に屋内での使用を禁止すべきと訴えた。

■代用品感覚での使用が目立つ

英国では、紙巻たばこから電子たばこへの切替えが禁煙治療の選択肢として示されている。加熱式たばこの禁煙効果はどのように評価されているのか。

欅田氏は「疫学的には現時点で禁煙効果は不明」と強調。田淵貴大氏(大阪国際がんセンター)は、「IQOS」使用者の約7割が紙巻たばこと併用していたとの使用実態調査の結果を紹介した。中村正和氏(地域医療振興協会)は、加熱式たばこ使用者へのグループインタビューを基に「禁煙に対するモチベーションは低く、紙巻たばこの代用品感覚での使用が目立つ」と述べ、禁煙につながる可能性は低いとの見方を示した。

■加熱式の使用は別途問診を

禁煙治療において医師が注意すべき点も指摘された。加熱式たばこ使用者の呼気からCOは検出されない。大和氏は「いきなりCOが急激に下がった患者がいたら、禁煙したか、加熱式たばこに切り替えたかのどちらかだ」とし、問診では、加熱式たばこ使用の有無を紙巻たばことは別に尋ねることを推奨した。

田淵氏は、禁煙目的での使用者が多くない点は認めつつ、「『周囲の害を減らそう』という思いで使う人もいる。頭ごなしに『加熱式もだめだ』と叱るだけでは、“心遣い”まで否定してしまい反発を招く」とし、使用目的に着目しながら禁煙の糸口を探るべきと述べた。

■「おしゃれな付属品」は規制対象外

欧米ではニコチン入り電子たばこが普及しており、加熱式たばこの人気は高くない。日本における加熱式たばこ流行について、望月友美子氏(日本対がん協会)は、ニコチン入り電子たばこが法的に規制されているという要因以外に、カートリッジなど付属品の種類が豊富で「おしゃれ感覚で楽しめる」点を指摘。付属品には、たばこ事業法も景品表示法も規制が及ばないことを問題視した。

【加熱式たばこ】:たばこ葉を燃焼させずに加熱してエアロゾルを発生させるたばこ。パッケージ上にニコチン量、タール量の表示はない。国内では、「IQOS」(フィリップモリス)、「glo」(ブリティッシュ・アメリカン・タバコ)、「Ploom TECH」(日本たばこ産業)の3製品が主流。フレーバー入りの液体を加熱してエアロゾルを発生させる「電子たばこ」とは異なる。


 

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

公立小浜温泉病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
勤務地: 長崎県雲仙市

公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top