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小児摂食障害の増加と多様化【多様化する病態に応じた治療法の検討が必要】

No.4900 (2018年03月24日発行) P.50

鈴木雄一 (福島県立医科大学小児科)

細矢光亮 (福島県立医科大学小児科主任教授)

登録日: 2018-03-25

最終更新日: 2018-03-19

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摂食障害は1980年から約10倍増加している。摂食障害の代表は神経性やせ症で,以前は「神経性無食欲症」や「神経性食思不振症」「思春期やせ症」と呼ばれていた。明らかな性差を認め,90%以上が女性である。初潮前に発症する前思春期例も増加しており,低年齢化が進んでいる。また,摂食障害発症の契機や症状が多様化している。

小児ではやせ願望が目立たずに,抱えている心理的ストレスが体に反映されて食欲が低下する場合や,胃腸炎に伴う嘔吐などの恐怖体験をきっかけに食べられなくなる場合もある。一方,摂食障害の背景として自閉スペクトラム症などの発達障害の関与が20~30%に認められるという。摂食障害と自閉スペクトラム症の共通点として,食事へのこだわり,対人関係・社会機能の稚拙さが指摘されており,乳幼児期からの発達経過を詳細に聴取し,発達障害の関与の有無を明らかにする必要がある。

初期治療の基本は,栄養の改善と間違った食行動の見直しである。英国のNICEガイドラインによると,神経性やせ症に対する高いエビデンスのある心理療法はいまだ確立していない。日本小児心身医学会刊行の『小児心身医学会ガイドライン集』1)には,エキスパート・コンセンサスに基づく治療指針が掲載されている。今後は,多施設共同研究によるガイドラインに基づいた治療の効果や,アウトカム指標を用いた予後予測因子の検討がなされることが求められる。

【文献】

1) 日本小児心身医学会, 編:小児心身医学会ガイドライン集. 改訂第2版. 南江堂, 2015.

【解説】

鈴木雄一*1,細矢光亮*2  *1福島県立医科大学小児科 *2同主任教授

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