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ノンアルは哀しからずや[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(191)]

No.4898 (2018年03月10日発行) P.64

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2018-03-07

最終更新日: 2018-03-06

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大腸ポリープの内視鏡的粘膜切除術を受けた後、梅田にあるちょっとおしゃれなフレンチビストロに行った。週末などによく前を通りかかるが、常にお客さんが列をなして待っている人気店だ。並んでまで食べる価値があるものなどこの世に存在しない、という強い信念の持ち主なので、興味はありながら、いつも横目に見ていた。

その日は平日のすでに2時前とあって待ち時間なし。えらいもんで、そのような店はやたらと女性比率が高い。カウンターに腰掛けてオーダーすると、おかしな時間帯にひとりでやってくるようなおっさんの足下を見透かしたかのように、ワインはいかがですかとソムリエが尋ねてくる。

いやぁ、美味しそうな食事やからワインを、と言いたいところなんやけど、今日はポリープを切ったところやからあかんのです、と機嫌良く個人情報満載で応じた。すると、さらに見透かしたように、それならノンアルコールワインがあります、という。

確かにそのような不埒な飲み物が存在すると聞いたことはある。が、ぶどうジュースとなにがちゃうねん、と蔑んでいた。しかし事情が事情である。いたしかたなし。

ノンアルコールだという先入観のせいかもしれんが、なんやら物足りない。ジュースみたいとまでは言わないが、ワインとジュースの中間くらいの感じだろうか。

禁酒期間中にも容赦なく宴会はやってくる。ジュースやコーラは、焼き鳥やお鍋を食べながらには甘すぎる。かといってウーロン茶では頼りない。結局、こんなもん誰が飲むねん、と普段は完全に無視しているノンアルコールビールを飲みまくるはめに。

通常、ノンアルコールビールと呼ばれているが、正しくはビールテイスト飲料というらしい。全く知らなかったが、ビールに比べると、各社で味がえらく違う。しかし、どの会社の製品も、う~ん、ビールテイストといえばビールテイスト、くらいのレベル。結局、炭酸水で我慢した方がええんちゃうか、という結論に落ちついた(注:あくまでも個人の感想です)。

ノンアルコール飲料は、ワインにしてもビールにしても、本物と比べられると絶対に勝ち目はないだろう。せいぜいの高評価が、ノンアルの割には結構美味しいよね、どまり。なんだかとっても哀しい飲み物なのである。まぁ、しゃぁないけど。

なかののつぶやき
「ネットでしらべると、ドイツのノンアルコールビールはえらく美味しいと高評価だ。なんでも、一旦作ったビールから透析の原理でアルコールを除いた『アルコール除去ビール』らしい。そらビールテイストですわなぁ。しかし、酒税などの関係で、日本ではそのやり方が認められていないそうだ。それくらいええやないか。まけといたれよ、国税庁」

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