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(4)腸内細菌と各種疾患 ─肝疾患 [特集:腸内細菌の臨床応用の可能性]

No.4807 (2016年06月11日発行) P.39

本多 靖 (横浜市立大学医学部肝胆膵消化器病学)

米田正人 (横浜市立大学医学部肝胆膵消化器病学講師)

中島 淳 (横浜市立大学医学部肝胆膵消化器病学主任教授)

登録日: 2016-06-08

最終更新日: 2017-01-24

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  • 分子生物学的手法の進歩に伴い,様々な疾患と腸内細菌との関連が報告されている

    肝疾患においても,非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)からアルコール性肝疾患(ALD),肝硬変,肝癌に至るまで,腸内細菌との関連が報告されている

    腸内細菌と肝疾患の病態では,①腸内細菌の組成の変化,②腸管壁のバリア機能の異常,③肝臓の病原体関連分子パターン(PAMPs)への反応性亢進,が重要である

    腸内細菌研究は,様々な肝疾患の病態解明の一助となり,また治療創薬のターゲットである。今後,様々な地域や人種において,解析方法を統一した大規模な検討が必要である

    1. 疾患との関連性において注目度が向上

    ヒトの各部位(皮膚,口腔,咽頭,上気道,胃,小腸,大腸など)には特徴のある多数の細菌が棲みついている(常在菌叢)。中でも,ヒトの消化管に存在する菌,腸内細菌(gut microbiota)が注目を集めている。今日,分子生物学的手法の進歩に伴い,培養をせずともDNA,RNAレベルで腸内細菌を解析することが可能となった。16SリボソームRNA(16S rRNA)を標的とした解析や,次世代シークエンサーを用いたメタゲノム解析(細菌叢を構成する細菌の遺伝子情報全体を解析する)などの手法が開発され,現在では様々な疾患において腸内細菌との関連が報告されている。
    消化管には約1000種類,約100兆(1014)個もの腸内細菌が存在し,腸内細菌は消化だけでなく,免疫や代謝にも重要な役割を持っていることが明らかにされている。代表的な腸内細菌を表1に示す。腸内細菌は免疫システムやエネルギー摂取,脂肪蓄積にも不可欠であり,ヒトは複雑な免疫調節機構の構築や,食物からのエネルギーの獲得などに腸内細菌を利用している。腸内細菌の99%以上がFirmicutes門,Bacteroidetes門,Proteobacteria門,Actinobacteria門の4つの門に属する1)。しかし,病的肥満や炎症性腸疾患などでは,健常者と比較し腸内細菌叢の組成が変化することや,菌の多様性が減少していることが明らかとなった2)。今日,このような変化は2型糖尿病や動脈硬化,過敏性腸症候群,アレルギー性疾患,さらには脳神経疾患でも指摘されている。本稿では,非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)やアルコール性肝疾患(alcoholic liver disease:ALD),肝硬変,肝癌と腸内細菌について概説する。

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