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(2)腸内細菌と各種疾患 ─腸疾患 [特集:腸内細菌の臨床応用の可能性]

No.4807 (2016年06月11日発行) P.26

大草敏史 (東京慈恵会医科大学医学部消化器・肝臓内科教授/同大学附属柏病院消化器・肝臓内科診療部長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-01-24

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  • 原因不明とされてきた腸疾患の多くについて,腸内細菌が一因となることがわかってきた

    炎症性腸疾患(IBD)では粘膜防御機能が低下し,粘膜に多数の腸内細菌の付着や侵入を許している

    IBDの腸内細菌叢はバランスが崩れてdysbiosisの状態で,病原性菌を多く含むProteobacteria門が増加し,probioticsを含むFirmicutes門が減少している

    潰瘍性大腸炎(UC)の原因菌として硫酸還元細菌群(SRB),Bacteroides vulgatusやFusobacterium variumなどが挙げられている

    クローン病(CD)の原因菌としてMycobacterium avium subspecies paratuberculosis,粘膜接着性侵入性Escherichia coli やFusobacterium nucleatumが注目されている

    下痢型過敏性腸症候群の原因のひとつは小腸腸内細菌異常増殖(SIBO)である

    大腸癌組織でFusobacteriumが多く検出され,注目されている

    非ステロイド性抗炎症薬起因性腸炎(NSAIDs腸炎)はE. coliやBacteroidesといったグラム陰性桿菌が原因であると推定されている

    原因細菌の特定により抗菌薬とprobioticsによる新治療法開発の道が開かれるであろう

    1. 腸内細菌と炎症性腸疾患(IBD)

    炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)は潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)とクローン病(Crohn’s disease:CD)に大別され,自己免疫性疾患であると言われてきていた。しかし,IL-10ノックアウトマウスなどの自然発症腸炎モデルが無菌状態では腸炎を発症しないことや,細菌構成成分の細胞内受容体であるNOD2(CARD15)の機能異常がCD発症に関与していることが明らかにされたことから,腸内細菌の役割がクローズアップされ,最近では,IBDは腸内細菌感染症ではないかと言われてきている1)(表1)。

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