高齢者の生活習慣病をどこまで管理し積極的な治療をするのか、議論を呼んでいる。そうしたなか、日本老年医学会の『高齢者の生活習慣病管理ガイドライン』作成ワーキング(荒木厚委員長)が、昨年10月、『高齢者脂質異常症診療ガイドライン』を公表した。脂質異常症とADLの低下、認知症との関連や、エンドオブライフに代表的な治療薬の内服をやめることができるかまで、高齢者の一般診療に即した内容になっている。
同ガイドラインは、「CQ1.脂質異常症は高齢者における動脈硬化性疾患発症に影響するか?」から「CQ13 エンドオブライフにおいてスタチンの中止は可能か?」まで、13のクリニカルクエスチョン(CQ)を設定。文献検索の結果の要約と解説をまとめている。
高齢者の脂質異常症に関しては、脳卒中との関連は明らかではないものの、総コレステロール(C)、Non-HDL-C、LDL-C値が高くなれば冠動脈疾患の発症が増加することから治療が必要とされる。代表的な治療薬であるスタチンの有害事象については、「高齢者においてスタチン治療は糖尿病の新規発症を有意に増加させるので注意を要する(推奨グレードB)」とした。CYPで代謝されるタイプのスタチンに対しては、薬物相互作用による有害事象に注意を促している。
注目すべきは、「エンドオブライフにおいてスタチンの中止は可能か?」とのCQに対して、余命1年以内の患者に対する中止は安全であり、QOL向上、医療費削減につながると結論づけていることだ。