母指手根中手(CM)関節症は,よく遭遇する症例か?
どのような愁訴が多いか? ADL障害は?
母指CM関節症の病態・解剖学的特徴は? なぜ発症しやすいか?
リスクファクターは何かあるのか?(年齢,職業,性差など)
鑑別診断は?
治療指針は?(専門医への紹介)
日常診療において母指周辺の痛みを訴えてくる患者は比較的多い。屈筋腱腱鞘炎,ドケルバン病,舟状骨骨折,手根中手(carpometacarpal joint:CM)関節症などがあるが,CM関節症に関してはあまり関心を持たれず,「年齢のせい」「使いすぎによる痛み(over use)」「治らない(治療法はない)」「経過をみましょう」などと説明されて諦めている患者もいる。しかし,CM関節症の症状・病態をしっかり正確に把握して患者に説明し,治療を勧め,患者のQOL改善に努めるべきである。
まず愁訴を列挙する。愁訴だけでは確定診断はつかない。
・つまみ動作(ピンチ)時の痛み
・ドアのノブ操作時の痛み(prehension grip)
・ホッチキス,ハサミ操作困難・痛み(grasp)
・大きいものの握り動作時の痛み(grasp or prehension grasp)
・病期が進むと変形(CM関節の亜脱臼位,第1中手骨の内転拘縮,対立障害)
・その他(痛みのため書字動作が困難,除草などの庭仕事ができない)
40歳以上の女性に多いとされている。関節面の形態は鞍状関節である(図1)。それゆえ,多方向の動きが可能であり,それを支えている靱帯構造が大きな意味を持つ(図2)1)。つまり,関節面の形態と,軟部組織である靱帯の異常が関節症発症のリスクファクターとなる2)〜4)。