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全身性エリテマトーデス合併妊娠【抗リン脂質抗体の精査,低用量アスピリン内服を考慮すべき】

No.4896 (2018年02月24日発行) P.48

出口雅士 (神戸大学地域医療ネットワーク学特命教授)

登録日: 2018-02-25

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全身性エリテマトーデス(SLE)合併妊娠は早産,妊娠高血圧症候群(HDP)をはじめ,血栓や血小板減少といった産科合併症をきたしうるハイリスク妊娠である。過去の報告ではループス腎炎,抗リン脂質抗体(aPL),SLEの活動性,低補体,抗ds DNA抗体価等が産科合併症と関連するとされる。

神戸大学でSLE寛解下に妊娠し管理した56妊娠について解析したところ,流死産と関係する独立因子は10週未満の反復流産既往(OR 12)で,病勢を示すSLEDAIスコアとは関連しなかった。37週未満早産の独立要因は抗リン脂質抗体症候群(APS)合併(OR 27),低補体(OR 7.6)で,34週未満早産では,aPL複数陽性(OR 6.9),SLEDAIスコア(OR 1.7)であった。また,HDPと妊娠時のプレドニゾロン内服14mg超(OR 7.6)が関連した。一方,妊娠中の低用量アスピリン(LDA)内服は過少体重児(LFD)を減少させた(OR 0.21)1)

APSにおいてもSLE等の自己免疫疾患合併がLFD,血小板減少と関連しており2),SLEとAPSは密接に関連し妊娠予後を悪化させ,特に低補体,aPL複数陽性が妊娠合併症のリスク因子となることがわかった。海外ではHDPやLFDの予防目的にSLE合併妊娠ではLDA内服が推奨されているが,今回,日本人においてもLDAの妊娠合併症に対する有効性が明らかになった。SLE合併妊娠に対してはaPLの有無を評価し,特にリスク因子を伴う場合はLDA内服(保険適用外)を考慮することで妊娠予後を改善できる可能性がある。

【文献】

1) Deguchi M, et al:J Reprod Immunol. 2017;125: 39-44.

2) Deguchi M, et al:J Reprod Immunol. 2017;122: 21-7.

【解説】

出口雅士 神戸大学地域医療ネットワーク学特命教授

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