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リンパ管腫の薬物治療【リンパ管腫治療に対して近年mTOR阻害薬の効果が報告されている】

No.4896 (2018年02月24日発行) P.48

古川泰三 (京都府立医科大学小児外科講師)

田尻達郎 (京都府立医科大学小児外科教授)

登録日: 2018-02-24

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リンパ管腫の治療として,硬化療法,ステロイド,インターフェロン(IFN)や放射線療法,最近では漢方薬(越婢加朮湯,黄耆建中湯)など様々な方法が報告されているが,macrocysticなリンパ管奇形以外は治療に難渋することが少なくない。

治療抵抗性で,乳糜胸水や腹水をきたすなど,著しくQOLが低下するような難治性リンパ管腫に対して,近年mTOR阻害薬の効果が報告されている。mTORはPI3Kによって調整されるセリン/スレオニンキナーゼであり,細胞の異化,同化を含む多くの細胞内の代謝や,血管新生および細胞の成長に関する重要な因子である。Hammillら1)はVEGFがリンパ管新生,血管新生に重要な因子であり,mTOR pathwayの中でstimulator,effector両方の作用を持つため,シロリムスなどのmTOR阻害薬は難治性血管奇形に効果がある可能性がある,と報告している。

米国では2009年より難治性血管奇形に対するシロリムスの臨床試験が開始され,82.5%の有効率であった。17年よりわが国でも臨床応用に向けたリンパ管腫に対するシロリムスの医師主導治験が開始され,その結果が待たれる。

【文献】

1) Hammill AM, et al:Pediatr Blood Cancer. 2011; 57(6):1018-24.

【解説】

古川泰三*1,田尻達郎*2  *1京都府立医科大学小児外科講師 *2同教授

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