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小児期発症IgA腎症の治療戦略【重症度による層別化した治療戦略が予後の改善に必要】

No.4895 (2018年02月17日発行) P.50

川崎幸彦 (福島県立医科大学小児科准教授)

細矢光亮 (福島県立医科大学小児科主任教授)

登録日: 2018-02-18

最終更新日: 2018-02-13

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IgA腎症は,メサンギウム領域にIgAが特異的に沈着する慢性糸球体腎炎である。「小児IgA腎症治療ガイドライン」1)では,臨床的あるいは組織学的な重症度に基づき「軽症例」と「重症例」の2つに分類している。軽症例では,アンジオテンシン変換酵素阻害薬あるいは漢方薬(柴苓湯)のいずれかを2年間以上投与することが,また,重症例では,副腎皮質ステロイド,免疫抑制薬,抗凝固薬,抗血小板薬を用いた2年間の多剤併用療法が推奨されている。副腎皮質ステロイドは,プレドニゾロン〔PDN 2mg/kg/日(最大80mg/日)分3〕を連日4週間投与し,その後2年間,隔日投与とし漸減中止する。免疫抑制薬は,アザチオプリンあるいはミゾリビンを使用し,抗凝固薬と抗血小板薬を併用する。現在,これら重症度別の層別化した治療選択により,IgA腎症の15年後の腎生存率は著明な改善を認めている。

急速進行性糸球体腎炎を呈する最重症例では,多剤併用療法のみでは長期予後が不良である例が多いため,ステロイドパルス療法を併用し,効果が不十分である場合は,血漿交換やより強力な免疫抑制薬を考慮する。また,ステロイド療法抵抗性IgA腎症では,扁桃摘出に加えステロイドパルス療法を施行することで予後の改善が認められた,と報告されている。

IgA腎症は発症時期やその病態により重症度が異なるため,個々の患児の予後を予想し,適切な時期に,適切な治療を行う必要がある。

【文献】

1) 日本小児腎臓病学会小児IgA腎症治療ガイドライン作成委員会:小児IgA腎症治療ガイドライン 1.0版. 2007. [http://www.jspn.jp/file/pdf/Iga.pdf]

【解説】

川崎幸彦*1,細矢光亮*2  *1福島県立医科大学小児科准教授 *2同主任教授

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