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小児へのB型肝炎ワクチン接種時に残液を利用できないか?【残液は処分を徹底。無駄をなくすため,ヘプタバックス®-Ⅱ0.25mL製剤が承認申請中】

No.4894 (2018年02月10日発行) P.59

藤澤知雄 (済生会横浜市東部病院小児肝臓消化器科 顧問/日本小児肝臓研究所理事長)

登録日: 2018-02-10

最終更新日: 2018-02-06

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B型肝炎ワクチンにはビームゲン®とヘプタバックス®-Ⅱとがあります。後者は「一度針を刺した残液は廃棄する」旨の記載がありますが,チメロサールを含有する前者には同様の記載はありません。ヘプタバックス®-Ⅱは,たとえば兄弟で2人がほぼ同時に接種した場合でも同一バイアルから2人分は使用できないことになります。現在,ビームゲン®は0.5mL製剤の供給がほぼなく,0.25mLの製剤を使用しています。ヘプタバックス®-Ⅱの0.5mLバイアルの残液を廃棄しなくてはならないのは非常に不経済であることもあり,疑問を抱いている状況です。
チメロサールの入っていないバイアルから直ちに2回目を採液したとき,感染のリスクが高まるというエビデンスが本当にあるのでしょうか。

(群馬県 Y)


【回答】

わが国では現在のところ,入手できるB型肝炎ワクチンはビームゲン®とヘプタバックス®-Ⅱのみです。ビームゲン®には防腐剤として微量のチメロサールが添加されており,0.25mL製剤と0.5mL製剤があります。10歳未満の小児では0.25mLが汎用されています。一方,ヘプタバックス®-Ⅱにはチメロサールは添加されていませんが,現在のところ0.5mLの製剤しかありません。

したがって,小児に接種する場合,ご質問にある取り扱いの注意事項のように,一度針を刺したものは直ちに使用し,残液はあったとしても処分することになります。確かに医療経済的には残液を破棄するのはきわめて残念です。この点を考慮して現在,0.25mLのヘプタバックス®-Ⅱを製造し,承認手続き中です(2017年12月現在)。したがって,近い将来はこのような残念なことはなくなると考えられます。

さて,ご質問のチメロサールを添加していないワクチン製剤の件です。かつて(1920年代後半),使用時に針刺しを繰り返すことによってブドウ球菌で汚染されたことから,複数回使用を前提としたバイアル製剤には防腐剤(保存剤)としてチメロサールが添加されるようになりました。しかし,環境からの水銀排除という世界的な動きがあり,ワクチン製剤に添加されるチメロサールの減量や除去は世界中で進んでいます。

なお,チメロサールの入っていないバイアルに短時間で2回の針刺しをした場合に感染のリスクが高まるというエビデンスはありません。少なくとも最近の報告はありません。

【回答者】

藤澤知雄 済生会横浜市東部病院小児肝臓消化器科 顧問/日本小児肝臓研究所理事長

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