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日医・中川副会長、「病床の過不足は『調整会議』が現場感覚で判断を」【地域医療構想】

No.4890 (2018年01月13日発行) P.16

登録日: 2018-01-11

最終更新日: 2018-01-11

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地域医療構想の実現に向けては、医療関係者、保険者らによる構想区域ごとの「調整会議」の役割が重要となる。日本医師会がこのほど開いた都道府県医師会担当理事連絡協議会で、中川俊男副会長は、各病床機能の過剰あるいは不足の判断は「調整会議の現場感覚」で行うとし、調整会議の機能の「フル活用」を求めた。

協議会で講演した中川氏は、①病床機能報告制度に基づく病床数、②地域医療構想における病床の必要量(必要病床数)、③基準病床数―の性質の違い(表)を解説。①と②の差に基づく「回復期病床不足」との理解が「一部で常識化している」とし、「都道府県や地域単位での単純比較をしても意味はない」と注意を呼び掛けた。

 

また、既存病床数が基準病床数を下回っており病床の追加整備の余地があるものの、病床の必要量が既存病床数を下回っているというケースについては、判断に迷う自治体が出ることが予測されるが、中川氏は「新規開設・増床については調整会議で検討を行うため、これまで地域医療を担ってきた施設以外の新規参入に対する実質的な歯止めになる」と説明した。

この点に関連して、埼玉県医師会から出された「病床機能の過不足の判断が難しい」との相談に対しては「調整会議が現場感覚に基づき、その病床機能は過剰だと思えば過剰、不足だと思えば不足。調整会議にはそれくらいの権限が保障されている」と回答し、地域医療構想では知事による強制的な病床削減機能がないため、調整会議を「フルに機能させる」ことが構想実現のカギになると強調した。

■協議に乗らない公立病院には「国から依頼」

総務省の『新公立病院改革ガイドライン』では、中小の公立病院は在宅医療に参入する方向性を提示している。また、公立・公的病院はガイドラインに基づき、今後担う医療機能や病床数などを記載した「プラン」を策定することになっている。

これに関して、厚生労働省医政局の佐々木健地域医療計画課長は、調整会議でプランの内容を精査し、地域医療構想と齟齬が生じる場合には「プランを修正してもらう」と説明。公立・公的病院が本部の意向で協議に参加しない場合は「厚労省から本部に参加を促すよう依頼する」と強調した。また、「政策医療を熱心な民間病院が主になって提供している地域もある」と述べ、公立・公的病院が一律に政策医療を担う必要はないとした。

中川氏は「民間医療機関は、将来の医療需要(患者数)データを読み込み、経営上の決断をしないといけない時期に来ている」とした上で、「公立病院が民間と競合した場合は率先してダウンサイジング、撤退、民間譲渡の道を選ぶべき。税制優遇のある公的病院は公的でないと担えない機能に特化すべきだ」と述べた。

■“数合わせ”では「おかしな方向に」

連絡協議会では、都道府県医師会から調整会議の進捗状況も報告された。静岡県医師会の小林利彦理事は、調整会議の始動は早かったが関係者の構想やデータに対する理解が十分でなく、議論が低迷していると説明。「病床の必要量に固執して病床数や施設数の“数合わせ”をするとおかしな方向に行く」として、医師会が診療所、病院、行政の橋渡し役となり、診療報酬改定の動きも見ながら方向性を考えることが重要とした。


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