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(2)舌下免疫療法の実情─治療効果および使用上の問題点について[特集:舌下免疫療法の現状]

No.4890 (2018年01月13日発行) P.31

永倉仁史 (ながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニック院長)

登録日: 2018-01-12

最終更新日: 2018-01-10

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  • わが国において初めてのスギ,ダニ舌下免疫療法(SLIT)の使用経験において,服薬率,治療効果は良好であった

    副作用は大部分が1~2カ月で消失または軽減し,重篤な副作用の発現は認められなかった

    今後,両者の併用例が増加する状況であるが,投与間隔をあけて使用した症例において,単独使用と比較して特に副作用の増加を認めなかった

    1. 舌下免疫療法(SLIT)の現状

    わが国でスギ花粉症に対する舌下免疫療法(sublingual immunotherapy:SLIT)の治療薬が2014年に発売されて,既に3年目のスギ花粉シーズンが経過し,その安全性および治療効果,使用上の問題点などが明らかになってきた。

    ダニSLITの錠剤が2015年に世界に先駆けて発売されて2年以上が経ち,世界共通のダニアレルギーに対して,世界の約20カ国で承認・販売されている。

    SLITは,世界各国でこれまで施行されてきた皮下免疫療法(subcutaneous immunotherapy:SCIT)に代わる,より安全な治療方法として発展してきている。現在は12歳以上が治療対象であるが,5歳以上の症例に対する適応拡大が近づいている。また,両者の併用についても症例数が増えてきたので検討する。

    2. アレルギー性疾患に対する免疫療法の歴史

    1910年,世界で初めての免疫療法がNoon1)によりLancetに発表されて以来,アレルゲン免疫療法は100年を超える歴史を持つ。最初の治療法は,抗原を抽出してつくった治療用ワクチンを注射するSCITとして実施されたが,局所の疼痛やアナフィラキシーなどの副作用が大きな問題であり,これに代わる,より安全な治療法の確立が望まれていた。

    約30年前より欧州において,これまで用いられてきた皮下注射用治療ワクチンを舌下に大量に服用するSLITが施行されるようになり,より安全な治療方法として治療実績を上げてきた。1998年には世界保健機関(World Health Organization: WHO)も,アレルゲン免疫療法は,対症療法とは根本的に異なり疾患の根治も望める根本的な治療であること,そしてアレルギー性鼻炎,アレルギー性結膜炎,重症を除く気管支喘息に適応があること,治療期間は現状において明確なエビデンスの蓄積がないものの,これまでの使用経験により3~5年必要であること,標準化抗原の使用が望ましいことなどをposition paperにて公表した(表1)2)

          

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