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ひとり今年の10冊 2017(下)[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(182)]

No.4888 (2017年12月30日発行) P.75

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2017-12-27

最終更新日: 2017-12-22

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  • 小説はあまり読まないが、町田康だけは別だ。『関東戎夷焼煮袋』(幻戯書房)は、関東へ移住して今や「戎夷」となってしまった町田が、故郷大阪のソウルフード、うどん、ホルモン、お好み焼、土手焼、イカ焼を自ら拵えて食す話。興味のない人にはまったく何のこっちゃという私小説的作品なのだが、個人的にはむっちゃおもろかった。

    詩となると、何がいいんだかさっぱりわからない。それでも、石川啄木と中原中也という、とんでもない性格の天才詩人には、あこがれのような興味がある。そこで、『中原中也─沈黙の音楽』(岩波新書)を。

    詩人である佐々木幹郎が、中也の作品を自筆原稿の推敲の状況などから深く読み解いていく。詩人ならではの解説に、詩というものがいかに考え抜かれたものであるかがよくわかる(ような気がした)。

    残り3冊は、選んでから気づいたのだが、偶然、お仕事関係の本になっていた。今年『文庫X』として話題をさらった『殺人犯はそこにいる』(新潮文庫)の清水潔と、かつてエリート裁判官だった瀬木比呂志による対談『裁判所の正体─法服を着た役人たち』(新潮社)は驚愕の1冊である。

    残り638文字あります

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