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わが国における膵移植の現状と問題点【単独移植は膵腎同時移植に比べ生着率が不良,課題は単独移植の成績向上と後継者育成】

No.4888 (2017年12月30日発行) P.61

加藤 厚 (国際医療福祉大学三田病院消化器センター/同大学医学部消化器外科学教授)

丸山通広 (独立行政法人国立病院機構千葉東病院)

登録日: 2017-12-26

最終更新日: 2017-12-22

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  • わが国においては脳死移植提供者数が限られており,1型糖尿病などの重症膵疾患に対する膵移植の待機期間が問題となっています。膵移植の現状と問題点について,千葉東病院・丸山通広先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    加藤 厚 国際医療福祉大学三田病院消化器センター/同大学医学部消化器外科学教授


    【回答】

    現在,わが国における膵移植の適応は,「糖尿病専門医による治療でも血糖コントロール困難な1型糖尿病患者」です。糖尿病性腎症を合併し人工透析を受けている患者には,腎臓も同時に移植する膵腎同時移植が行われます。1997年の臓器移植法施行後,2000年4月に第1例目の膵腎同時移植が行われ,2017年6月末日時点で287例の脳死または心停止ドナーからの膵移植が行われています。その間,移植待機中に低血糖発作等で死亡した患者が55例,重篤な合併症により登録を取り消された患者も70例あります。移植待機中の患者は205例です。2010年の臓器移植法改正により膵移植件数は増加しており,年間30例ほどが行われています。今までに生体膵臓移植も27例行われていますが,保険適用外であり,脳死ドナーからの移植の増加により現在は行われていません。

    移植後の生存率は1年,5年が96.1%,95.6%であり,主な死因は,感染症,心不全,悪性腫瘍です。生着率は1年,5年が86.1%,73.9%であり,早期の機能廃絶の原因は,膵グラフトの血栓症,急性拒絶などであり,晩期では,慢性拒絶反応,1型糖尿病の再発などです。これらの成績は米国での成績とほぼ同等ですが,わが国のドナーが高齢で,死因に脳血管障害が多いことを考慮するとむしろ良いと言えます。

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