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耳科手術におけるパラダイムシフト:経外耳道的内視鏡下耳科手術(TEES)【低侵襲かつ明視下で施行でき,安全・確実に機能を改善】

No.4888 (2017年12月30日発行) P.59

欠畑誠治 (山形大学耳鼻咽喉・頭頸部外科教授)

登録日: 2017-12-28

最終更新日: 2017-12-22

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20世紀の医療における最大のパラダイムシフトのひとつは,微細な構造を可視化できる手術用双眼顕微鏡の登場によって引き起こされた。裸眼で行われていた手術は,拡大視することで安全・確実に病変を取り除けるものとなった。その恩恵を最初に受けた耳科手術では,聴力を温存し改善する機能的な手術が可能となった。

第2のパラダイムシフトを引き起こしたのが,広角な視野で死角が少なく,視点の移動が容易であり,対象への接近・拡大が可能な光学機器である内視鏡と,ビデオカメラシステムとの統合である。現在,私たちはビデオカメラシステムの高精細化,多機能化によって,人間の「眼」を超える「目」を手に入れた。ヒトの網膜を超える高解像度の画像で,コントラストや明るさのみならず,カラースペクトラムの調整などの画像強調により,人間の「眼」を超えた映像を見ながら手術ができるようになった。さらに,術者が内視鏡をのぞき込むという楔から解放されたことにより,術者は常に楽な姿勢で助手や器械出しの看護師,見学者などと画像を共有しながら手術を行うことが可能となった。

当科では,ほとんどすべての手術操作を外耳道から行うkeyhole surgeryである経外耳道的内視鏡下耳科手術(TEES)を世界に先駆けて開発・改良してきた。高精細な画像と新たな手術機器を開発することで,外耳道を鼓室およびその末梢への直接的なアクセスルートとして使用するTEESは,低侵襲でありながら,明視下で安全・確実に中耳機能改善を達成できる手術となった。

【解説】

欠畑誠治 山形大学耳鼻咽喉・頭頸部外科教授

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