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肺魚(ハイギョ)[炉辺閑話]

No.4889 (2018年01月06日発行) P.126

岩﨑昭憲 (福岡大学呼吸器・乳腺内分泌・小児外科主任教授)

登録日: 2018-01-08

最終更新日: 2017-12-21

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出張が多いので、移動に費やす時間をどのように有効に利用するかが課題となる。当初はPCを駆使し仕事を移動中継続することも試みたが、やはり凡人である私は、乗り物酔いと睡魔に勝てないこともあり、断念した。

そこで、空港や駅のBook Storeで本を適当に購入し読むことにした。限られた至福の時間である。時代物や歴史、科学系のものを好んで読んでいる。1度ワインの本を買ってはみたが、奥義が深く難しそうだったので、途中で断念した。お酒は楽しく味わえればよいと考えることにした。

最近『爆発的進化論』(新潮社刊)と題する新書を手に入れた。

私が呼吸器外科医ということもあり、第5章の「酸素をどう手に入れるのか」を興味深く読んだ。

人間は陸上動物であるので肺呼吸をしているが、水中の魚は鰓呼吸である。稀な例として、シーラカンスやハイギョ(肺魚)のような魚は、肺も備わり鰓で水中呼吸もしている。また、魚の浮袋も肺も、消化管が膨らんでできた同じ袋だそうである。進化の過程で水中から地上へ移ったのであるから、空気呼吸するための器官である肺は、浮袋より後に進化したと考えられるはずであるが、実は逆なようである。なんとなく不思議である。

私たち人間は、DNAデータなどから先ほどのハイギョ(肺魚)の仲間から進化したとされる。そこで、この魚に興味を持ち、今時のインターネットで少し調べてみた。

この魚は、今から4億年前に現れ肺を使って呼吸をするので、水がなくなっても窒息をせず、乾期には地中で夏眠をして生きている。その時に掘り出されることがあり、魚だとすぐに傷むが、肺呼吸をしているので長期放置しても悪くならず、美味しいそうである。絶食に強く、輸送に水や防腐処理も不要なので、宇宙での食料として期待される。我々の祖先が宇宙時代に貢献できる可能性を持つことで再び脚光を浴びているのも、不思議な気がする。

出張中の楽しみのひとつに夜時間を利用した映画鑑賞がある。2日前に観た「猿の惑星」では、知能を持ったサルが主人公であった。ちなみに、チンパンジーと人間は共通の祖先ではあるが、700万年前に進化の過程でわかれたことも先ほどの新書に書いてあり、興味深かった。時には、古代へ思いを巡らすのも楽しいものである。

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