この11月、講演のため長崎市と五島列島を訪問する機会があり大きな学びを得た。今回、「長崎在宅Dr.ネットの本質」と上五島の「病院が提供する在宅医療」についてご紹介したい。
すでにあまりにも有名になった「長崎在宅Dr.ネット」であるが、在宅医療に携わる開業医の連携ツールとして始まった。24時間対応するために主治医と副主治医をネットで手上げ方式で決めるという。さらに広域の医療圏で大病院と開業医が連携するのが「あじさいネット」である。長崎県では多職種を対象とした勉強会や懇親会がたくさん開催され、年々連携の規模が拡大しているように感じた。
Dr.ネットやあじさいネットの本質とは何だろう? そしてなぜそれが長崎で可能なのか? そんな素朴な疑問がずっとあった。しかし今回の訪問で多職種のみなさんと酒を酌み交わしながら、その本質を私なりに探った。その答えは「在宅医療の質の担保や向上」であった。Dr.ネットはある意味、相互監視システムではないか。あるいは医局と同様にベテランが初心者を教え合う教育システムであり、単にICTだけの世界ではないことがよく分かった。
Dr.ネットが広く円滑に運営されるようになった下地には、長崎という地方都市の地縁も大きいと感じた。つまり地元の中学高校の同級生や先輩後輩関係がそのまま歳をとっても脈々と続いていた。医局制度と同様に見事に屋根瓦方式になっている。在宅医療はチーム医療なので、やはり外科系の医師が多い印象を受けた。「地縁」という意識が薄い東京や大阪では長崎方式を造るのは難しいとも感じた。地域でこまめな勉強会と懇親会を重ねるしか方法はないだろう。