米国の外科医Moshe Scheinらによる、手術の合併症について実践的なアドバイスをまとめた書。TFM PUBLISHING LTDより2013年に刊行
とにかく嬉しくなるほど楽しい本。至る所に、「You kill your patient」とか、「The patient will die」という言葉が出てくる。腹部手術の合併症に関して、本書に優る実用書をいまだ知らない。
消化管吻合術後、吻合不全となり再吻合術を行うのだがうまくいかず、呼吸不全、多臓器不全でICUに入室する患者がいる。あるいは汎発性腹膜炎をうまく乗り切れない症例。なぜうまく乗り切れないか、それをズバリ述べているのが本書だ。
私はICUの治療にも携わる麻酔科医である。例えば、胃・小腸吻合術の縫合不全で何度か再吻合するも、うまくいかず状態悪化でICU入室となった症例。しかし患者は結局、多臓器不全で死亡した。本書は「小腸のリークは再縫合をするな。やってもまたリークを起こし、そのうち患者は死亡するだろう(Your patient will die)」と書く。「あれ、この本の言っている通りではないか」。
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