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完全鏡視下肺葉切除での三次元内視鏡の有用性【肉眼視と同様な画像が得られ拡大視された奥行き感に優れる】

No.4884 (2017年12月02日発行) P.59

伊藤宏之 (神奈川県立がんセンター呼吸器外科部長)

山下芳典 (呉医療センター・中国がんセンター 臨床研究部部長/呼吸器外科科長)

登録日: 2017-12-03

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  • 内視鏡デバイス,技術の発達によって,今や胸腔鏡下の手術は,呼吸器外科医にとって必須の手技となりました。鏡視下肺葉切除にはいくつかの流儀がありますが,いずれも斜視鏡の角度・方向を変え視差を利用することで,鉗子と組織との距離を確認し手術を進めます。近年,三次元視が可能な内視鏡デバイスが発売され,今までにない視覚情報を得ることができるようになりました。その長所と今後の発展性,現状の課題についてお教え下さい。呉医療センター・山下芳典先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    伊藤宏之 神奈川県立がんセンター呼吸器外科部長


    【回答】

    胸腔鏡手術は,胸壁への低侵襲性により術後胸部痛など開胸術にまつわる有害事象の改善に貢献してきました。従来の二次元(2D)による胸腔鏡手術の問題点として,画像情報だけからでは対象物までの距離や組織の立体構造が把握しづらいため,肉眼視とは違い不自由さがありました。近年,三次元(3D)内視鏡システムが数社から発売され胸腔鏡手術の分野においても利用可能となりました。当院では,視野が広いとされる軟性鏡による3D胸腔鏡手術を肺癌に対する根治術,肺葉切除術を中心に応用し2年以上にわたり経験しましたので,その功罪についてお答えします。

    3Dで立体視できることの利点を述べます。基本的に直視で肉眼視しているものと同様な画像が得られますが,それに加え拡大視された奥行き感という優れた視覚情報が得られます。術者の手によって把持された器具が目標物へ到達するスピードが速く正確な操作が可能となり,たとえば肺動脈の被膜の把持が容易です。特に3Dの威力を実感できるのは,気管支断端の閉鎖の際に刺入する縫合針と組織との位置関係の把握(縫合操作),胸壁と癒着のある症例で剥離面の凹凸に対応したスムーズな剥離(癒着剥離),区域間切離の際の区域間の立体的な把握(区域間切離)などの場面です。現在は肺葉切除にこだわらず,当院では,ほぼすべての呼吸器外科手術で3D内視鏡システムが使用されています。

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