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松本良順(11)[連載小説「群星光芒」295]

No.4884 (2017年12月02日発行) P.68

篠田達明

登録日: 2017-12-02

最終更新日: 2017-11-28

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  • 湯野浜温泉で療養して10日余り、関節リウマチの痛みはだいぶ薄らいだ。

    そこへ早飛脚がやって来て1通の書簡を届けた。榎本武揚からの手紙だった。

    榎本はわしの姉ツルの娘タツを娶ったので義理の甥に当たる。わしが鶴岡城郊外の湯野浜温泉に滞在することをどこかで知ったらしい。

    「我が艦隊は松島湾の寒風沢島に集結しており、薩長軍と対決する日も近づきました。一両日中に土方歳三君も同乗する運びです。ついては叔父貴に相談したいことがあるので大至急、仙台までお越し願いたい。土方君も叔父貴に会いたがっております」

    高飛車な書状だったが、「急ぎ仙台へ参る」と返事を出した。

    致道館に戻ると門人たちに申しつけた。

    「これから仙台の榎本武揚に会いにゆく。お前たちはここで待機しておれ」

    慶応4(1868)年9月5日の早暁、藩の用意した肩輿に乗って単身鶴岡城下を後にした。

    仙台松島湾の寒風沢島沖に幕府海軍の軍艦8隻が集結していた。わしは旗艦開陽丸に乗船して榎本と再会した。土方歳三もすでに乗り込んでいた。

    その夜、艦長室で各艦の艦長たちと軍議が開かれ、わしと土方も陪席した。

    冒頭、議長の榎本は真っ黒な口髭をひねって口をひらいた。

    「我々は箱館に結集して北白川宮を盟主と仰ぐ独立国を樹立し薩長と対峙する覚悟である。各艦の艦長も決意を新たにしたところである。叔父貴も我らに加わり、箱館に陸海軍病院を設立して頂きたい」

    わしは即座に断った。

    「いつまでも国を二分して戦っていては必ず外国の餌食になる。それにわしは国をひとつに纏める独自の秘策を抱いているのだ」

    「ほほう、それはいかなる策ですか?」

    榎本が目を丸くしたので、これを披瀝することにした。

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