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2015年米国甲状腺学会(ATA)成人の甲状腺結節・分化癌取扱いガイドラインの主な改訂点:治療【risk-adapted managementの旗印のもと,超低リスクがんに対するactive surveillanceや低リスクがんに対する甲状腺葉切除が容認される】

No.4882 (2017年11月18日発行) P.56

岡村律子 (日本医科大学内分泌外科病院講師)

登録日: 2017-11-17

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従来,甲状腺分化癌,特に乳頭癌の初期治療方針は,わが国では亜全摘以下の甲状腺温存切除・補助療法なし,欧米では全摘・補助療法〔放射性ヨウ素(RAI)内用・TSH抑制療法〕と相反するものであった。実際,2009年版米国甲状腺学会(ATA)ガイドラインでは,1cmを超える甲状腺癌に対しては,「初回手術は甲状腺全摘でなければならない」としていた。しかし,今回のATAガイドラインの改訂1)においては,個々の症例のがん死・再発リスク評価に基づくrisk-adapted managementの考え方が浸透し,彼我のガイドラインは非常に近い内容のものとなった。

甲状腺切除範囲については,腫瘍径>4cm,肉眼的腺外浸潤,臨床的リンパ節転移,遠隔転移,のいずれかを有する症例は高リスク群として全摘を,1cmより小さく腺外浸潤やリンパ節転移のない低リスク群には葉切除を推奨し,中間群については,いずれも選択可能とした。臨床的に明らかな転移や,浸潤のない微小乳頭癌に対するactive surveillanceの容認も含め,わが国から発信されたエビデンスが欧米の治療方針に影響を与えた結果と考えられる。

RAIやTSH抑制の適応や程度,経過観察中のリスク再評価についても細かく提示されており,今後,グローバルにrisk-adapted managementの妥当性が検証されることが期待される。

【文献】

1) Haugen BR, et al:Thyroid. 2016;26(1):1-133.

【解説】

岡村律子 日本医科大学内分泌外科病院講師

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